ITをフル活用した時間貸し駐車場ビジネスなどで急成長を遂げてきたパーク24。直近の2011年10月期決算では、売上高1240億円、経常利益127億円と増収増益で利益面では過去最高を記録した。それでも「目指しているものを考えると、厳しく評価せざるを得ない」とする西川光一社長に、その目指すものと、「収益の源泉」であるITの活用を聞いた。

2011年10月期決算では過去最高益でした。

西川 光一 氏
1989年4月にアマダ入社。93年11月にパーク24に入社、情報開発部長に就任。94年1月に取締役、95年3月に営業副本部長兼東京本店長、97年4月に営業副本部長兼戦略企画室長。98年1月に常務取締役。2000年11月にタイムズ24(現タイムズサービス)の代表取締役、02年6月にドライバーズネット(現タイムズコミュニケーション)の代表取締役社長に就任。04 年1月より現職。1964年10月生まれの47歳。(写真:陶山 勉)

 優、良、可、不可で言えば、良より少し悪いかなといった感じです。東日本大震災の影響があり、当初計画からは約8億円のショートです。目指しているものを考えると、厳しく評価せざるを得ません。目指すものとは、駐車場のなかでまず我々の「タイムズ」から車が埋まる仕組みを創り出すことです。距離のハンディキャップを無くしたいのです。

 距離とは目的地までの距離。顧客が駐車場を選ぶ理由は、9割以上が「目的地に近いから」です。目的地の隣に他の駐車場があって、離れた場所に当社の駐車場があったとします。極めて近い距離ならば、「タイムズクラブ」の会員はポイントがたまるから、駐車してくれるかもしれない。しかし、20m離れていたら利用してもらうことは難しいでしょう。

 我々が目指すのは、ポイントの提供をはじめ、クレジットカードや電子マネーによる決済、携帯電話やカーナビへの駐車場の位置情報や満空車情報の配信などを通じて、20m、30m離れていても、タイムズを利用してもらえるようにすることです。究極の目標ですが、そうなると他の駐車場がたくさんあっても駐車場を造れてしまいます。ITを活用した新サービスを出し続けることで、顧客に訴求していきたいと思っています。

距離のハンデはまだ克服できず

厳しい環境で好業績だったのは、距離のハンデを克服しつつあるからとは言えないのですか。

 当社のビジネスモデルでは、損益分岐点を超えた部分の売り上げはそのまま利益です。つまり、売り上げがあと8億円伸びていれば当初計画を達成できたわけです。営業の努力は評価しますが、なぜ微々たる数字が取れなかったのか反省しなければならない。厳しい環境と言っても、他の駐車場にも車がたくさん入っていたわけですから、距離のハンデの克服が足らなかったととらえるべきです。

売り上げの2割弱を占めるモビリティ事業はいかがですか。成長の余地が大きいようですが。

 モビリティ事業はレンタカーとカーシェアリング、ロードサービスの三つです。そのうち、「タイムズプラス」として展開するカーシェアリングは、市場がまだできておらず伸びる余地が大きい。

 駐車場とカーシェアリングは、商売のツボが同じです。時間貸しの駐車場は、土地のシェアリングビジネスです。我々が地主から土地を借りて、時間単位で駐車場として顧客に貸すわけです。カーシェアリングは、シェアするものが土地から車に変わっただけです。参入して2年半がたちましたが、十分な手応えを感じています。

西川 光一 氏
(写真:陶山 勉)

昨年5月に持ち株会社化しましたが、その狙いは何ですか。

 今期(2012年10月期)から3カ年の中期経営計画では、2014年10月までに駐車場の運営台数で50万台、カーシェアリングに関しては車両配備を1万台まで拡大することに挑戦します。ただ、これは通過点です。駐車場が70万台、100万台の規模になったとき、従来の体制でやっていけるのかというと、やはり無理があります。

 重要なポイントは、規模の拡大とともに、クオリティーを落とさず逆に上げていくことです。そのために、各事業から余計な部分をはぎ取って、業務に特化させました。それにより、意思決定のスピードアップとクオリティーアップにつなげようというのが、組織体制を変更した最大の目的です。

事業規模が大きくなるに従って、クオリティーなどの面で気になる兆候が出てきたのですか。

 それは常にあります。そもそも私が満足したら終わりです。どうしてもっときれいな駐車場にできないのか、料金をもっと安くできないのかと、常に考えています。最終的には人が判断しなければならないことですが、その判断材料としてデータをもっと活用しなければと思っています。

 「TONIC」と名付けたシステムで、全ての駐車場のデータを吸い上げているのですが、活用しているデータは3割から4割にすぎません。実はTONICでは、将来何が必要になるか分からないので、取れるデータを全部吸い上げることにしてあります。