2017年度に売上高1兆円、海外比率5割超のグローバル企業を目指す資生堂。アジアを代表する企業へ脱皮するため、最も重視する中国市場で圧倒的存在感の確立を急ぐ。同時に、縮小が続く国内市場での事業のたて直しも、待ったなしだ。2011年4月に社長に就任し、成長戦略を加速する末川久幸氏に、今後の事業展望とIT活用の方向性を聞いた。

「日本をオリジンとし、アジアを代表するグローバルプレイヤー」を目指すとしていますが、それに向けた取り組みを聞かせてください。

 1982年3月に国際商科大学(現 東京国際大学)卒業。同年4月に資生堂入社。2001年6月に化粧品価値創造本部フィティットバリュークリエイション課長、02年6月に経営改革室課長、05年4月に経営企画部次長。07年2月に事業企画部長、資生堂インターナショナル取締役社長などを兼務。08年4月に執行役員 経営企画部長、09年6月に取締役 執行役員 経営企画部長、10年4月に取締役 執行役員 常務 経営企画部長。11年4月より現職。1959年3月生まれの52歳。(写真:陶山 勉)

 それは、2017年度の最終ゴールの姿をイメージしたビジョンです。今はその第2フェーズで、「成長軌道に乗る」ことを目標に2011年度から取り組んでいます。

 重要なのは、やはり中国です。市場の成長を超える取り組みをしていくつもりです。中国ではプレステージ商品として、現地ブランドをデパート900店舗に展開し、グローバルブランド「SHISEIDO」の製品ラインも育てています。約5000店の専門店も組織しました。中間所得者層の顧客向けには、「TSUBAKI」を展開します。

 米国では、買収したベアエッセンシャルをグローバル化させます。既にフランスやイギリス、日本、香港で展開しており、ブラジルへの進出も発表しました。中国には2013年に進出します。このように国とブランドをクロスさせて展開することで、グローバル化を加速しようと考えています。

中価格帯のたて直しが課題

国内市場は縮小が続いています。2000円から5000円の中価格帯が不振と聞いていますが。

 はい、苦戦しているのは中価格帯です。市場が二極化していることは間違いないと思います。高級品は堅調に売れていますし、ボリュームゾーンも売れています。では中価格帯は全くダメかと言うと、そうではなく、その市場に対して製品の価値をきちんと伝え切れていないと考えています。

 我々の従来のビジネスモデルは、新製品を順次発売しキャンペーン広告を打つことで、多数の顧客に店頭に来てもらうことでした。従来はうまくいっていました。流通やメーカーが顧客に比べ多くの情報を持っていたからです。

 ところが最近は、それが逆転してしまいました。顧客はPCやスマートフォンを使って、メーカーや流通が持っている情報を容易に入手できます。加えて、顧客発の情報がSNSで瞬時に駆け回ります。今までのような一方的な情報発信はもう限界なのです。

 そこで今、個々のブランドや製品の価値をきちんと伝えることに、トライしようとしています。例えばファンデーションでは、2011年に「涼活のススメ」という情報発信に取り組みました。化粧品をうまく使うことで、夏を快適に乗り切ってもらおうというものです。実は、ファンデーションは水を使って付けると皮膚の温度が下がって清涼感があるのです。

 ビューティーコンサルタント(美容部員)には、そうした情報をしっかりと顧客に伝えてもらうようにしています。同時に、肌のお手入れサービス、要は手を使って使い方を説明したり、メークを指導したりしてもらう。でも、新製品をどんどん発売すると、新製品のことを覚えるのに精一杯になってしまいます。ですから今は新製品の数を減らしています。その代わり、空いた時間をそうした活動に費やそうというわけです。