このところ、リアルビジネスとネットサービスを連携したサービスが増えている。Webを通じて参加者を募り、参加者自身で旅行の内容を決めていくサービス「trippiece」もその一つである。2011年に同サービスを立ち上げた石田氏にサービスの概要や狙いを聞いた。

(聞き手は菊池 隆裕=ITpro)

旅行というリアルな既存商品を、Webサービスによって組み立てていくという点がユニークなサービスです。この開発背景を教えてください。

trippieceの石田言行氏
trippieceの石田言行氏
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 2010年夏に体験した、NPOの活動がベースになりました。このNPOでは世界中の子どもたちに送ってもらった写真を国内で紹介し、関心を持ってもらった人に旅行をお薦めするという活動をしていました。

 私個人としてもバングラディッシュに行ってみたいと考えていたのでTweetしてみたところ、10人くらいから返事がありました。そこで各方面にヒアリングしながら原案を作り、旅行代理店に相談して一緒に旅行を作り上げたのです。最終的に18人が10日間の旅行を共にして、旅行中だけでなく旅行後も適宜、連絡を取り合っています。

 あらかじめ目的をもって旅行に参加することはあっても、行く前に交流会をするなど可視化された状態でのツアーはなかったと思います。一人で行くのは不安でも、同じ思いを持っている人と一緒であれば行けるツアーもあるでしょう。こんなツアーがもっとあったら面白いと考えてサービスを組み立てました。

サービスの本質を議論

サービス開発は順調だったのでしょうか?

 その後、2011年3月31日に会社を設立し、8月1日にアルファ版をリリースしました。

 問題は、この後に顕在化しました。当時のメンバーは、デザイナーとエンジニア、海外担当と私の4人がいましたが、自分たちのサービスとはどんなものか、サービスが始まった後でもしっかり共有できていなかったのです。今思えば、コミュニケーションが不足していました。

 当初のサービスでは、ある程度完成された旅行プランが並んでいました。ユーザーは、自分が参加したい旅行を見付けて申し込むという形です。しかし、それは自分としては何となく違うなと感じていました。自分としては、タイトルと想いだけがあって、詳細の部分は参加者が発言しながら作り上げていくのがいいと思いました。

 それが分かったのは、9月にサンフランシスコで開催した合宿です。このときに、大学のゼミで顧問をされていた本間毅さん(現、楽天執行役員)にお会いし、激励されると同時に、厳しい指摘もいただきました。特に強く言われたのは、CEOとしての根本的な姿勢であり、チームビルディングに関してです。

 君たちは本音で話し合っているのか、とかなり強い調子で言われました。そこから目の色を変えて議論し、このサービスでは何が大事なのか、結果として出てくる数字のうち何を重視するのか、ようやく共有できました。