3月6日よりドイツ・ハノーバーで開催されたCeBIT 2012で大きな注目を集めたのがWindows 8だ。Metroスタイルのアプリやスタート画面もさることながら、企業ユーザーが注目したい重要な新機能が、USBストレージからWindows 8を起動する「Windows To Go」だろう。キーノートでMicrosoftのCOOであるKevin Turner氏がWindows To Goに言及したほか、Windows担当のシニアディレクターErwin Visser氏も、Windows To Goのデモを行った(関連記事:CeBITでMicrosoftがWindows 8のビジネス向け機能を発表)。

 Windows To Goは、企業ユーザーにとっては活用次第でかなり面白い使い方ができる機能といえる。たとえば、モニターだけでなくPC自体もオフィスで共有できるかもしれない。だが、その具体的な運用方法について、USBストレージの作り方を含め、よく分からない点も多い。そこで、Windows To Goに関する疑問点について、CeBITのMicrosoftブースでWindows 8関連のスペシャルステージにも登壇したMicrosoft GermanyのWindows担当プロダクトマネージャーであるBoris Schneider-Johne氏に聞いた。

(聞き手はtezawaly(山口 健太)=Windows Phone ブロガー



CeBIT初日の基調講演やプレスカンファレンスにおいてビジネス向けの機能として「Windows To Go」が紹介されました。

Microsoft Germany Windows担当プロダクトマネージャー Boris Schneider-Johne氏
Microsoft Germany Windows担当プロダクトマネージャー Boris Schneider-Johne氏
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 Windows To GoはWindows 8の新機能の中でも重要なものだ。一般的なUSBストレージだけを使って完全なWindows 8を起動できる。これまでのWindowsにはない試みだ。セッション時間に限りはあったものの、CeBITで行なったデモには好感触を得ている。

一部のメディアでは、Windows To Goを試すための方法として「Windows Automated Installation Kit」を用いたUSBストレージの作成手順が紹介されていますが?

 それはMicrosoftが推奨する公式な手順ではない。なぜなら、現時点でMicrosoftではWindows To Goをエンドユーザーが試すことを想定していないからだ。将来的に、Windows To Go用にUSBストレージをセットアップするツールをリリースするかどうか検討している。だが、現時点でWindows To Goはデモンストレーション用の機能と位置付けている。

Windows To Goで起動したPCにハードディスクやSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)といったストレージが内蔵されている場合、これらはOSからどのように見えるのでしょうか?

 現段階では、あらゆるローカルドライブにアクセスできない仕様だ。つまり、Windows To Goから認識できるストレージは、あくまで起動に用いたUSBストレージのみとなる。ただし今後、ユーザーからのフィードバックを検討しながら、さらに仕様を詰めていく予定だ。

USBストレージは製品によってパフォーマンスに差があります。また、USB2.0とUSB3.0には転送速度に大きな差があります。Windows To Goを快適に使用するために、必要なハードウエア要件はあるのでしょうか?

 Windows To Goのデモでは、一般的なキングストンテクノロジー製のUSBメモリーを使用している。容量は32Gバイトで、インタフェースはUSB2.0だ。それでも、Windows 8の起動時間は十分に高速で、優れたパフォーマンスを発揮している。デモで利用しているのはConsumer Preview版だが、製品版ではさらに処理を最適化できるだろう。

Windows To Goで使用するUSBストレージには、OSやアプリだけでなく、ユーザーデータも格納されています。ユーザーはUSBストレージを紛失したり、盗難にあった場合を想定すべきでしょうか?

 扱うデータや環境にもよるが、もちろんそうした事態を想定すべきだ。CeBITのデモで言及した通り、Windows To GoではBitLockerによるUSBストレージの暗号化に対応している。

今回のCeBITでMicrosoftは、Windows To Goを主に企業ユーザー向けの機能として発表しました。家庭内で活用するといった、コンシューマー用途は想定しているのでしょうか?

 確かにホームユーザー、個人ユーザーによる活用の可能性はある。これについても、今後のフィードバックをもとに、実現するかどうか検討していきたい。

Windows To GoはARMプラットフォームでもサポートされるのでしょうか? 一般的なARMタブレットでWindows 8を起動できるようになりますか?

 ARM環境への対応については、Windows 8のブログに掲載されたSteven Sinofskyによる記事(該当記事)が現時点で公開できる最新の情報だ。CeBITでARM版についての新しい情報はないと考えてほしい。

Windows To GoにおいてWindowsのライセンス体系はどのようなものになるのでしょうか。たとえば1つのOSライセンスを使用して100本のUSBメモリーにWindows 8をインストールすることはできますか?

 ライセンスは重要な視点だ。Consumer Preview版の段階では詳細が決まっていないため何とも言えない。が、これもユーザーからのフィードバックを得てから最終的なライセンス方法を検討したい。

「Windows To Go」とは?

 Windows To Goは、2011年秋に開催された開発者向けのカンファレンス「BUILD」において発表された新機能で、OSを含むユーザー環境一式を格納したUSBストレージからのブートを可能にするもの。

 これまでに明らかになっている仕様は次の通り。まずUSBストレージは、少なくとも32Gバイト程度の容量が必要とされる。ストレージの種類としては、一般的なUSBメモリーで構わない。このUSBストレージにWindows 8本体、アプリ、ユーザーデータなどを配置する。ただし、現時点ではそのための手順やツールが公開されていないため、エンドユーザーが試す方法はないようだ。

 起動時にはこのUSBストレージをPCに接続し、ブートドライブとしてPC内蔵のストレージではなく、USBストレージを指定する。USBストレージから起動したWindows 8からは、PCに内蔵されているハードディスクやSSDは認識することができない。そのため履歴やキャッシュがPCに残ってしまうという心配がない。

 セキュリティ面では、USBストレージをPCから取り外した状態で60秒が経過するとWindows 8はフリーズするようになっている。また、USBストレージはBitLockerによる暗号化にも対応する。

 Windows To Goは、Windows 8の新機能として企業ユーザー向けに一般公開されている。ただし、インタビューで答えているように、Windows To Goはまだデモ用の機能に過ぎず、Consumer Preview版を入手したユーザーが自分で試せる段階ではないというのが現状だ。ユーザーからの反応次第では大きく仕様が変わる可能性もありそうだ。興味のある人は、まずはConsumer Previewを使ってみて、積極的にフィードバックしてみるとよいだろう。