リアルタイムに時々刻々と生成される大量のデータから、いかに知見を見出してビジネス戦略に生かすか――。ビッグデータ活用が情報システムのあり方と企業戦略を大きく変えようとしている。ビッグデータ活用に向けた取り組みをソフトウエア関連の製品・サービスとストレージの両面から日立製作所に聞いた。

(聞き手は田島 篤=ITpro

日立の考えるビッグデータとは。

日立製作所 情報・通信システム社ソフトウェア事業部 事業部長 阿部 淳氏
日立製作所 情報・通信システム社ソフトウェア事業部 事業部長 阿部 淳氏

(阿部)データ分析には20年前から取り組んでいるし、BI(ビジネスインテリジェンス)のブームは約10年前にもあった。ただし、昨今は以下の二つの要因から、より一層のデータ活用が求められている。一つは、企業を取り巻く経済環境や競争が厳しくなったこと。これに関連して、もう一つは、ITを業務の効率化ではなく、事業拡大や事業創生といった経営戦略で活用しようという機運が高まってきたことである。

 ビッグデータがいま注目されているのは、大量のデータを扱いやすくなったことに加えて、データを経営課題や業務課題の解決に直接生かそうという需要の高まりによる。この意味では、ビッグデータ活用の対象となる領域は、かなり広いと考えている。また、IT部門だけでなく、経営層にも訴求すべきテーマだろう。

ビッグデータ活用に向けて、日立の強みはどこか。

(橋本)他社と比較したときの強みという点では、ストレージと社会インフラである。膨大なデータを収集・蓄積して分析するには、信頼性の高い大規模ストレージが欠かせない。当社は大規模ストレージをグローバルに展開しており、多くの顧客の要望に応えられる。

情報・通信システム社 RAIDシステム事業部 副事業部長 橋本 崇弘氏
情報・通信システム社 RAIDシステム事業部 副事業部長 橋本 崇弘氏

(阿部)社会インフラ事業に強いことに加え、事業範囲が広いのもビッグデータ活用で有利だろう。当社には、様々な業種の顧客と一緒になってシステムを開発してきた人材が多数いる。顧客の業務を知っている人材がいることは大きな強みだ。

 ビッグデータ活用では、経営者視点での業務課題から導入検討を始めるケースが多くなる。この際に顧客の業務プロセスが分かることは大切だ。ビッグデータ活用での人材というとデータサイエンティストが話題になりがちだが、それ以前に顧客の業務を知っている人材が必要である。

(三木)当社は、基幹業務向けのデータベースおよび基幹業務向けのストレージを提供している。今後、データ量が増えるに従って、これまで培ってきた高い信頼性が求められるケースが増えてくるだろう。例えば、社会インフラということでは、技術面での信頼性だけでなく、障害が起こったときの運用管理体制も問われるだろう。データを絶対無くさない、トランザクションを落とさない、といったことも含めて、運用面においても顧客の最もクリティカルなシステムが担えることが当社の強みの一つである。