「BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)のゴールは『業務の見える化』ではない。可視化したプロセスを継続的な業務改革に生かしてこそ本当の効果が得られる」。パワード プロセス コンサルティング(PPC)で代表取締役社長を務める力 正俊氏はこう主張する。力氏はERP(統合基幹業務システム)ベンダーのSAPジャパンやBPMベンダーのIDSシェアー・ジャパン(2011年1月にソフトウェア・エー・ジーと合併)を経て、現在はPPCで独メタソニックのBPMソフト「Metasonic Suite」を販売している。
日本ではBPMはなかなか定着しない。
BPMという言葉は長いこと、定義や効果があいまいなまま使われてきたのではないか。「業務プロセスの見える化」がBPMであるという印象もいまだに強い。私が前職(IDSシェアー・ジャパン)で扱っていたBPMソフト「ARIS」も、基本的に業務プロセスを描くためのツールだった。
業務プロセスを定義したと言いながら、実際にはシステムによる処理の流れ、すなわち「システムフロー」を定義しているケースも少なくない。企業全体の業務プロセスの中で、見える化・IT化されているのは20%に過ぎないとする調査もある。
まず、業務プロセスをきちんと見える化するのが第一歩。それにとどまらず、見える化した結果を継続的な業務改革に生かす。そうすることで初めて、BPMの真の効果が得られる。副次的な効果としてコスト削減もあるが、それはあくまで管理上のメリットだ。BPMを正しく活用すれば、リードタイムの短縮をはじめ、直接ビジネスに関わる成果につながる。
そのためには何が必要か。
まず、現場の担当者が自ら業務プロセスを作成できること。次に、作成した業務プロセスが実行可能であることだ。
業務に最も精通しているのは、現場の担当者すなわちビジネスユーザーである。担当者自らがプロセスを作成するようにしないと、業務の流れを正しく、かつ漏れなく反映できない。もう一つの「ブロセスが実行可能」は、プロセスを見える化するだけでなく、その結果にのっとった一連の処理を、複数のシステムと連携しながら実行できることを指す。
これらの要件を満たすBPMソフトは意外と存在しない。業務プロセスを実行可能なBPMソフトは複数あるが、プログラミングの知識が必要になるケースがほとんどだ。プロセスを実行可能にするために詳細な定義が必要になり、現場の担当者が使いこなせなくなるのも珍しくない。
プロセスの作成や実行を「動的」にできることも大切だ。ビジネスの状況は日々、変化する。プロセスの作成や実行のために数カ月、さらに規模が大きい場合は1年以上かかったりすると、こうした変化に追従できない。ビジネスユーザー自身でプロセスを作成できず、変更の必要が生じるたびに外部に依頼しなければならなくない場合も同様だ。結果として、BPMの効果を発揮しにくくなる。