リアルタイムに時々刻々と生成される大量のデータから、いかに知見を見いだしてビジネス戦略に生かすか――。ビッグデータ活用が情報システムのあり方と企業戦略を大きく変えようとしている。NECでビッグデータを統括する執行役員常務 山元 正人氏に、ビッグデータ活用の捉え方およびNECならではの強みなどについて聞いた。

(聞き手は田島 篤=ITpro

NECの考えるビッグデータとは。

NEC 執行役員常務 山元 正人氏
NEC 執行役員常務
山元 正人氏

 ビッグデータはそれほど新しい話ではない。2006年ごろから一部の顧客のデータが大量に増えつつあり、特に先進的な顧客ほど「データ爆発」の課題に直面しつつあった。問題はデータ量の増加に伴い、処理する時間が長くなってしまうことである。データ量が急増したので1日で処理できなくなってしまった、などの事例が出てきた。もっとリアルタイムに近い形で処理したいという要望は、その当時からあった。

 こうした要望に応えるために開発したのが、大量のトランザクションを高速に処理するインメモリー型のデータベース管理製品「InfoFrame TAM(Table Access Method)」である。当時のRDBで同等の性能のシステムを構築しようとすると何十台、何百台ものサーバーが必要になる。それではシステム構築に時間と費用が掛かってしまう。そこで、データベース管理製品を新たに開発した。

 このようにミドルウエア製品群の「InfoFrame」においては、顧客からの要望に応じて大量のデータを高速に処理できるソフトウエアを順次用意してきた。着々とビッグデータ活用に向けて対処してきたわけだ。

 顧客の話を聞いていると、「データ活用の範囲を広げたい」という要望は多い。「データ量は増えているものの、活用できずに捨ててしまっている。このデータを活用して競争力を高めたい」という声をよく聞くようになった。これに応えたい。

それは経営層からの要望なのか。経営層がデータ活用の幅を広げたいと考えている?

 情報システム部門が経営層から「こういうことをやりたいんだけど」と言われて、どのようにシステムにしようか悩んでいる場合がある。また、今あるデータを処理できないと、次のサービスを見いだせないという意識もあるようだ。そのため、当社ではどういう提案をしたらよいのかを内部で議論している最中だ。

 ただし、一般的には、データ活用を強く意識している企業が多いとは言い難い。10年ほど前になるが、日米の企業がどのくらいのデータを持っているかを調査したことがある。すると、同じくらいの売上高規模の顧客で、約10倍の差があった。米企業は日本企業の約10倍のデータを持っていた。日本企業は効率化を考えて、いらないデータを早めに捨て、データをいかに小さく持つかに力を注いでいた。だからディスクの容量が少ないという結論であった。