リアルタイムに時々刻々と生成される大量のデータから、いかに知見を見出してビジネス戦略に生かすか――。ビッグデータ活用が情報システムのあり方と企業戦略を大きく変えようとしている。今年前半にも“ビッグデータに対応した”「SQL Server 2012」を投入予定の日本マイクロソフトに、ユーザー企業にとってのメリットを中心に聞いた。

(聞き手は田島 篤=ITpro

日本マイクロソフトにおけるビッグデータの定義を教えてほしい。

日本マイクロソフト 斎藤 泰行氏
日本マイクロソフト
サーバープラットフォームビジネス本部 クラウド&アプリケーションプラットフォーム製品部 シニアエクゼクティブプロダクトマネージャー
斎藤 泰行氏

(斎藤)ビッグデータの定義の前に、なぜ今、ビッグデータが注目されているのかを押さえておく必要がある。現在のビッグデータは、「大量データの高速処理技術」という技術ドリブンなキーワードになってしまっている。欧米でビッグデータが注目されているのは、技術が登場したからではなく、タイムリーな意思決定が企業の競争力強化に不可欠だからである。

 ビジネス環境の変化の速さ、刻々と変わる消費者ニーズにより、意思決定のスピードが求められている。集計されたサマリーデータではなく、個々のデータの積み重ねとなる明細データをタイムリーに処理する。ここでは、統計データではなく流動データが扱える「変動性」、年次や月次ではなく日次や時間単位で処理できる「速度(スピード)」、刻々と変わる消費者ニーズなどが反映されるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を扱える「多様性」が必要で、これを実現するためにデータ量が大きくなったものがビッグデータである。

 このビッグデータを活用するために、企業における意思決定のスピード、スタイルを変えざるを得ないところに来ている。経験と勘や度胸はもはや通用しない。

具体例は出てきているのか。

 ある製造業では、顧客先に設置した機器の稼働データをリアルタイムに管理している。機器の稼働状況をネットワーク経由でリアルタイムに収集し、それを分析して、いつメンテナンスにいけばよいのか、どのパーツを在庫しておけばよいのかといったことを把握している。これにより、効率的にメンテナンスを行っている。また、この例では、意思決定の迅速化も果たせている。

 従来、ビッグデータ活用というと、ソーシャルネットワークでの非構造化データ、あるいはRFIDのようなセンサーデバイスのデータをどのように扱うのかに注目が集まりがちだった。そうではなく、プロセスの効率化や意思決定の迅速化をいかに実現するかが大事である。

従来のBIとどこが違うのか。

 データに基づいた意思決定という点では、ビッグデータ活用はBIの延長戦上にある。ただし、ビッグデータ活用という以前に現状では、既に手元にあるデータをもっと有効活用する必要がある。

 日本マイクロソフトはアイ・ティ・アール(ITR)と共同で、従業員数が500名以上の国内企業を対象にしたデータ活用に関する調査を2011年9月に実施した。その結果を見る限り、「データの鮮度」および「データ活用の成熟度」の面で、既にあるデータが有効に活用されているとは言い難い。

 「データの鮮度」に関する結果を見ると、BIツールで利用しているデータは、「月次」(約33%)や「四半期」(約26%)、「年次」(約12%)のものが多く、「日次および時間単位」でデータを利用している企業は全体の2割程度であった。BIツールを既に導入している国内企業を対象にした調査であり、これを見ると、まだ国内ではデータに基づいて意思決定するスタイルが定着していないと言える。

 「データ活用の成熟度」については、「定型レポーティング/帳票作成」しているという回答が約7割、「非定型レポーティング/帳票作成」が約4割、「定型パターンによるデータ分析」も約4割であった。「データマイニング/統計分析」を実施している企業は約2割程度(23%)であり、まだまだデータ活用の余地はある。