米サヴィス(日本法人はサヴィス・コミュニケーションズ)は、企業情報システム(エンタープライズ)を対象に、ITインフラの運用アウトソーシング事業を手がけるデータセンター事業者である。2012年2月20日には、仮想化技術を採用した月額制のクラウド型サービス「Savvis Symphony」の国内提供も開始した。同社幹部にアウトソーシング事業の現状を聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro


他社と比べた米サヴィスのデータセンター事業の強みは何か。

米サヴィス、クラウド・サービス担当副社長兼ゼネラル・マネージャのダニエル・パットン氏(写真左)と、米サヴィス、アジア地域統括社長兼サヴィス・コミュニケーションズ代表取締役社長のマーク・スミス氏(写真右)
米サヴィス、クラウド・サービス担当副社長兼ゼネラル・マネージャのダニエル・パットン氏(写真左)と、米サヴィス、アジア地域統括社長兼サヴィス・コミュニケーションズ代表取締役社長のマーク・スミス氏(写真右)

ダニエル・パットン氏:最大の強みは、幅広いサービスを提供できること。コロケーションやマネージドホスティング、プライベートクラウドやパブリッククラウドなど、形態が異なる複数のサービスを1社で提供できる。重要なポイントは、ユーザー企業の多くが、これらの個々のサービスを組み合わせたハイブリッド型のシステムを利用している、という事実だ。

 ユーザー企業は、幅広いサービスを自由に組み合わせたハイブリッド型のシステムを調達して利用したいと考えている。この需要に応えられる事業者として、米サヴィスが優位に立つ。米サヴィスは、インフラの構築に必要なビルディングブロックのすべてを提供できる。一方、他の事業者が提供できるサービスは、パブリッククラウドに限られたり、コロケーションに限られたりする。

マーク・スミス氏:ユーザー企業がITインフラに求める要件は複雑だ。仮想化環境を提供する際にも、ミッションクリティカルな業務アプリケーションを動作させようとしたら、そうでない場合と比べて、より高度なサービスが要求される。例えば、セキュリティを高める必要がある。こうした状況があるので、米サヴィスでは、何よりもサービスのカバレッジ(カバー範囲)を上げることに注力している。

 米サヴィスが目指している姿は、ユーザー企業の情報システム部門の延長線の役割を果たすこと。ユーザー企業の担当者と米サヴィスとの間で、ユーザー固有の業務プロセスや業務手順をシームレスにやり取りできることが重要だ。良い事例が、メルボルン(オーストラリア)のスポットレスグループだ。独SAPの製品を使った、社員4万5000人の給与管理アプリケーションを米サヴィスのクラウドで動かしている。米サヴィスの個々のサービスを用途用途で組み合わせている。

SIベンダーが提供するアウトソーシング事業との違いは何か。

マーク・スミス氏:SIベンダーが手がけるサービスは多種多様だ。例えば、情報システム部門が必要とするすべてを提供するベンダーがある。また、独SAP製品に特化した構築/運用サービス会社もある。SIベンダーに共通する点は、業務アプリケーションの構築や運用にフォーカスしていることだ。

 SIベンダーの本分は業務アプリケーションであり、インフラではない。例えば、自社でデータセンター設備を持たないベンダーや、インフラに関する知識が少ないベンダーがいる。こうしたSIベンダーと米サヴィスは、パートナーシップの関係にある。SIベンダーが業務アプリケーションに特化し、米サヴィスがインフラに特化する、という役割分担だ。

ダニエル・パットン氏:アメリカにおいても同じことが言える。多くのSIベンダーが、米サヴィスとのパートナーシップを望んでいる。インフラ以外のアプリケーションサービスに特化したいからだ。米サヴィスにインフラ管理を任せてしまいたいからだ。

インハウスとの比較で、そもそもITをアウトソースする利点は何か。

ダニエル・パットン氏:根源的な問いだ。個々のユーザー企業によって異なってくる。例えば、CAPEX(設備投資費)をOPEX(運用費)に切り替えたい企業なら、確実にアウトソーシングの形態を選ぶ。

 コストの問題のほかに、事業の俊敏性の問題もある。企業の人的資源は限られており、本来は人的資源を製品の差別化/差異化のために使いたい。こう考えると、ITインフラの構築/運用は、外部にアウトソースしたほうがよい。

マーク・スミス氏:以前と現在では、CIO(最高情報責任者)の役割が変わっている。CIOは、自社のビジネスの根底に何があるのかを見極め、ITシステムのあり方をデザインする必要がある。

米サヴィスのサービスの技術的に優位な点な何か。

ダニエル・パットン氏:例えば、クラウドサービスのSavvis Symphonyでは、仮想サーバー環境(VMware)の運用を自動化/省力化する基盤ミドルウエアを自社開発している。これが、米サヴィスの知的財産となっている。ユーザー企業は、セルフサービスポータルを経由して、システム資源を自分で調達/プロビジョニングできる。

 この基盤ミドルウエアは、市場のクラウド運用基盤ソフトが提供する機能を一通り備える。仮想環境のプロビジョニング、稼働状況の監視、トラブル発生時のチケット発行、保守要員によるサポートなど、インフラ運用のワークフローを自動化する機能を一通り提供する。

 クラウド型のSavvis Symphonyに至る以前から、必要な時に必要なインフラ資源を調達できるようにしてきた。例えば、以前は、リソース管理機能を持つPCサーバー(米Egenera)とストレージ(米3PAR)を提供してきた。その後、米VMwareの仮想サーバーソフトを取り入れた(PCサーバーには米Hewlett-Packard製品や米CiscoのUCSを利用している)。