イスラエルRadwareは、負荷分散装置を中核とするベンダーである。2010年以降は、負荷分散装置を仮想アプライアンスとして運用できるようにするなど、仮想化環境との親和性に力点を置いている。同社CTOのアビ・チェスラ氏に、負荷分散装置の動向を聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro


負荷分散装置のトレンドは何か。

イスラエルRadwareでCTOを務めるアビ・チェスラ氏
イスラエルRadwareでCTOを務めるアビ・チェスラ氏

 ユーザーとワークロードをエンドツーエンドで管理する方向に進んでいる。負荷分散装置のファブリックが、ユーザーが置かれたネットワークファブリックと、ワークロードが置かれたコンピューティングファブリックの間に入り、これらの間の通信を管理し、制御する。

 大前提として、仮想化環境との親和性がある。負荷分散装置そのものが仮想アプライアンスとして動作するアーキテクチャによって、エンドツーエンドでの管理などが可能になる。いくつかの負荷分散装置をラインアップしているが、まずはAlteonブランドの中・大規模向け製品から順に仮想化のアーキテクチャを採用した。

エンドツーエンドで管理する対象は何か。

 アプリケーションの種類に応じた、レスポンス、可用性、セキュリティなどのSLA(サービスレベル契約)だ。SLAの設定値と、実際の測定値と比べることで、SLAを遵守するために必要な対策を打てるようになる。例えば、リソースの負荷状況やレスポンスに応じて負荷分散装置の機能を動的にON/OFFするといった具合だ。

 SLAを制御するために必要な機能の一つとして、サーバー仮想化ソフトと連携するためのプラグイン「vDirect」を用意している。これにより、サーバーの場所が移動したり、サーバーの台数が増えたりといったような、システム負荷に応じて負荷分散先のサーバー構成が動的に変更になるケースにおいて、負荷分散装置の設定を追従させられる。

アプリケーションごとの設定を支援する仕組みはあるか。

 パラメータチューニングを自動化するためのテンプレートを用意している。AppShapeと呼ぶ。OracleやSAPなど個々のアプリケーションごとに異なるチューニング内容をテンプレート化したものだ。これを適用すると、適用しない場合と比べて、50~60%性能が向上する。

 テンプレートの作成にあたり、個々のアプリケーションと負荷分散装置との通信内容を調査している。ユーザーは、利用するアプリケーションさえ選べば、設定内容のベストプラクティスを自動的に得ることができる。性能のボトルネックとなる要素はアプリケーションごとに異なっており、これに合わせてパラメータを変える必要がある。

今後のロードマップは。

 新たなハードウエアプラットフォーム、新たなアクセラレーション対象、新機能、などを予定している。プラットフォームは、今よりも大規模なシャーシ型きょう体を用意する。1台のきょう体で1000台の負荷分散装置を300Gビット/秒の帯域で動作させられるようになる。

 アクセラレーション対象としては、SPDYなどの新たなプロトコルに対応させる。新機能では、DPI(Deep Packet Inspection)を可能にして、パケットの内容を負荷分散に利用できるようにする。今後は、OpenFlowと連携させ、OpenFlowスイッチによってレイヤー3~4だけでなくレイヤー7で負荷分散できるようにする。