富士通とのアウトソーシング契約を更改したわけですが、どこを評価しましたか。
この「PROBANK」は機能面で他行の勘定系システムに比べて全く遜色がないですし、365日24時間払い戻しができるというのは差異化にもなっています。何より、この8年間の安定稼働の実績は大きいです。そこで当面、富士通のお世話になることにしました。
アウトソーシングを続けることで、システム部門が弱体化する懸念はないのですか。
確かに課題です。ただ、当行や関連会社の東邦情報システムには、ベンダー以上のスキルを持った人材がいます。彼らが富士通と一緒にプロジェクトに取り組むなかで、しっかりとマネジメントできていたと判断しています。やはりアウトソーシングといえども、自分たちがコントロールするのだという意識が一番大事であり、そのことさえ忘れなければ大丈夫だと思いますよ。
ただ、世代間のギャップは何とかしなければなりません。自前で開発しなくなると、そのシステムを担当していた若手が辞めてしまうといったことも起こります。将来のために解決すべき課題として、経営としても意識しています。中途採用や人材教育の充実にも取り組んでいるところです。
仲間の銀行を増やすのが課題
アウトソーシングの当初の目的は、他行との共同化によるコスト削減でした。
勘定系システムの共同化という面では、我々が当初想定した銀行の数に比べて少ないのが現状です。多ければよいというわけではありませんが、やはりコストメリットの面で問題です。
6年後の次期システムをにらんで、仲間の銀行を増やすことを考えていかなければなりません。今のままでは単独で運営しているのと変わらなくなってしまいますからね。富士通にも言っているのですが、お互いにそのための環境を整備していく必要があります。銀行にとってIT投資は重い負担ですから、今からすぐに取り組まなければならない大きなテーマだと考えています。
そうすると、今後のIT投資は抑制するのですか。
IT投資の負担が重いとはいえ、IT戦略は経営戦略そのものですから、おろそかにしていたら、やがて経営面で劣後する部分が出てきてしまいます。差異化の手段として、しっかり投資していくことが大事だと思います。
来年には約40億円を投じて営業店支援システムを刷新します。4月から8月の5カ月間で全店に展開する予定です。従来だったら、2年ぐらいかけて展開したでしょうけど、今回は一時的な負担が膨らみますが、思い切って一気に実施することにしました。
ITは絶え間なく進化していますから、そうした環境の変化を、さらに顧客のニーズの変化をしっかり先取りして、先手、先手で手を打っていくべきだと思っています。これからは預金、融資といった従来の業務にどう付加価値をつけていくのかが、銀行間の差につながります。ですからIT投資は、やるべきときには思い切ってやる。それは、これからも同じです。
北村 清士(きたむら せいし)
(聞き手は、木村 岳史=日経コンピュータ)