光回線を、モバイルを補完するものとして位置付けているようにも聞こえるが。

三浦 惺(みうら・さとし)氏
写真:新関 雅士

 もちろん補完もあるが、ほかにも光回線はまだまだ需要が拡大していくと思っている。まず、料金を2段階定額にした「フレッツ 光ライト」を始めたことで、より幅広いユーザーが利用しやすくなっている。また、これまでとは違ったNGNの活用法も出てくるだろう。

 例えば自動販売機や店舗の端末、様々なセンサーをつないで情報を収集したり、制御したりするネットワークなどはこれから広がっていく。いわゆるM2M(マシン・ツー・マシン)と呼ばれる使い方だ。様々な機器をつないだネットワークで情報を収集していけば、“ビッグデータ”のニーズも出てくるだろう。その際のプライバシー保護を含めて、通信事業者にはできることがもっとある。2011年7月にNTT空間情報という子会社を設立したのも、その一環だ。NTT空間情報は、電子地図の制作や通信回線を利用した各種情報収集・処理を手掛ける。

 こうした用途・場面でもモバイルを使えないわけではないが、品質の安定性など光回線のほうが向いている部分もあると考えている。今後、少子高齢化が進んでいけば、1世帯に1回線という発想では市場が飽和してしまう。それでも成長していくために、世帯以外の市場の拡大に注力していく。

新しい需要の開拓やブロードバンド普及のために、フレッツ 光ライトよりももっと安いメニューを用意することもあるか。

 フレッツ 光ライト自体、西日本ではこれからだし、東日本でも始まったばかり。今の時点で料金をどうするとは言えない。しばらくは様子を見ていく。その先に別の料金体系を設けるかどうかは、他事業者や他のサービスとの競争の行方次第だ。

グローバル展開について聞きたい。今のところサービス面でそれぞれが有機的に結びついているようには見えない。これからどうしていくのか。

 グローバルについては、買収した各社の社長が参加する、戦略委員会と人事委員会という二つの委員会を設けている。この委員会で、「グローバルでシームレスなサービス提供」を目指すように話している。しかも、コンサルティングから、アプリケーション提供までトータルなサービスだ。

 実際には、現場ではもっと具体的な話が進むようになっている。現地を訪ねたときに聞いてみると、顧客への提案活動の中でグループ企業のサービスを紹介したり、サービスを組み合わせて提供したりといったケースは着実に広がっていることが分かる。

三浦 惺(みうら・さとし)氏
写真:新関 雅士

グローバルでシームレスにというと、海外でもネットワークインフラを持ってサービス提供するということか。

 そういうことではない。ネットワークは各地の事業者とのパートナーシップでいい。意識しているのはソリューション提供のほう。例えばディメンションデータがNTTコミュニケーションズのデータセンターを活用する、オフソースのアプリケーションを使ってシステムを提供するといったことだ。

 オーケストレーションという言い方をしているが、ネットワークからアプリケーションまで、各社のサービスを組み合わせ、グループ全体でそれらを連携させたり、運用を自動化したりする。これも一つのコンバージェンスだと考えている。

NTT 代表取締役社長
三浦 惺(みうら・さとし)氏
1944年生まれ。広島県出身。67年に東京大学法学部を卒業し、日本電信電話公社(現NTT)に入社。96年取締役人事部長、98年常務取締役人事労働部長などを経て、99年7月に東日本電信電話(NTT東日本)の代表取締役副社長に就任。2002年6月にNTT東日本の代表取締役社長。2005年6月にNTT代表取締役副社長中期経営戦略推進室長、2007年6月にNTT代表取締役社長に就任(現職)。趣味は旅行、山登りなど。

(聞き手は,河井 保博=日経コミュニケーション編集長,取材日:2011年12月13日)