スマートデバイスが充実し、高速モバイルが急速に浸透する中で、光ブロードバンドの拡大に努めるNTT。一方では、企業のグローバル進出が加速するのに合わせ、NTTグループも対応を急いでいる。ブロードバンド拡大やグローバル化を中心とした2012年の戦略について、三浦社長に聞いた。
2012年はどんな年にしたいか。
まず、2012年度は「サービス創造グループ」という目標を掲げた中期経営戦略の最終年度で、我々にとっては節目の年になる。財務面では、連結営業利益1兆3000億円などの目標を掲げたが、これまでのところまずまず。東日本大震災の影響で滞った投資などを除けば順調に進んでいる。2012年も目標の達成を目指す。
サービス面では、これまでも言ってきた四つのキーワード、「グローバル化」「コンバージェンス」「クラウドコンピューティング」「マルチデバイス」への対応を、引き続き推進していく。
2011年を振り返ると、スマートフォンは予想を超える勢いで浸透してきた。この勢いはまだまだ続く。複数の無線、固定通信を含めて、融合(コンバージェンス)も進むだろう。クラウドも、大規模に導入するケースが出始め、流れはますます加速していくはずだ。
グローバル化は、ディメンションデータやキーン・インターナショナルの買収が少しずつ効果に結びつき始めている。目標としていた売上高100億ドルは前倒しで達成したが、もっと連携を深めていく。
スマートデバイスがここまで浸透してくると、NTTドコモだけではなく、ほかの事業会社のビジネスにも影響が及ぶのではないか。
確かに、スマートデバイスあるいはモバイルの伸びは目覚ましい。特にコンシューマーの領域がそうだ。これに伴って、スマートデバイスと様々なサービスを連携させる取り組みが重要になってきている。
例えばひかりTVを自宅のテレビだけでなくスマートデバイスでも見られるようにする、公衆無線LAN(Wi-Fi)を含め各種通信サービスを連携させるなどしてきた。さらにコンバージェンスを強化していく必要がある。
そうすると、NTT東西やNTTコミュニケーションズの事業領域に関して規制緩和も必要になるのか。
基本的には、それぞれが規制の範囲内で、モバイル関連の事業を展開していけばいいと思っている。例えば既にNTT東西はモバイルWi-Fiルーターを提供している。NTTコミュニケーションズは、法人向けにスマートデバイスを提供しているし、スマートフォンからIP電話を利用できる050 plusというサービスも始めた。特に法人向けでは相対契約で様々な取り組みができる。
もちろん、他社との競争の状況によっては、規制の枠を越えなければならない可能性はある。その場合は規制緩和を求めていくことになるが、その前に、規制の範囲内でできることがまだまだあるはずだ。まずはそこに注力する。
モバイルはLTE(Long Term Evolution)やモバイルWiMAXなど高速なサービスが充実してきた。それでここまでモバイルが浸透してくると、フレッツ光の需要はこれ以上増えないのではないか。
確かにモバイルだけでいいというユーザーも一部にはいるし、端末もスマートデバイスになっていくだろう。しかし、だからといって固定、フレッツ光の需要はもうこれ以上ないのかというと、そんなことはない。
少なくとも、今のモバイルトラフィックの増え方を見ると、電波というリソースに限りがある無線通信だけでは収容しきれない。モバイルと固定通信を融合させて、全体のトラフィックをさばけるようにしていかなければならない。
安定性や大容量のニーズもある。LTEなどで高速通信ができると言っても、映像通信など大容量の通信で安定した品質が欲しい場合には、やはり光回線のほうが有利だ。
三浦 惺(みうら・さとし)氏
(聞き手は,河井 保博=日経コミュニケーション編集長,取材日:2011年12月13日)