国内総生産(GDP)で世界第2位の経済大国となった中国。その東北部に位置する大連市は、日本からの距離の近さと日本語が話せる人材の多さを武器に日本向けのソフト・サービス提供拠点として拡大を続ける。そのトップに立つ夏徳仁 大連市共産党委員会書記は同市のITサービス産業について「今後5年間は年平均30%以上の成長を続ける」と断言する。大連市の今を夏書記に聞いた。
(聞き手は、大和田 尚孝=日経コンピュータ)
日本企業から見た、大連市のソフト・サービス提供拠点としての強みを聞かせてください。

ほかの国の都市、あるいは中国のほかの都市と比べて、三つの優位性があります。
一つは地理的に日本に近いことです。日本の各都市との間には、定期便だけで週70便以上の航空機が飛んでいます。東京や大阪だけでなく、札幌、福岡など9都市との間で直行便があります。
もう一つは人材です。大連には23の大学があり、大学生が30万人以上います。ほとんどの大学に、ソフトウエア開発を扱う学部があり、ソフト専門の大学もあります。
人数だけではありません。中国のほかの都市との決定的な違いは、日本語を話せる人が多いことです。多くの大学生が大学で日本語を学んでいます。日本語を話せる人材の厚さは、中国の都市のなかではトップだと思います。
三つめは市の政策です。市のトップである私が言うと自慢のように聞こえてしまうかもしれませんが、大連市は1990年代後半と早くから、日本向けのソフト開発とBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)などの産業育成を始めました。2003年に中国政府が振興政策を打ち出してからは、大連市も産業育成に向けた様々な優遇政策を出しました。このとき、大連市は特にソフト・サービス産業の発展を重視し、人材の誘致につながる政策を発動しました。
具体的にどんなものですか。
例えば、企業が大連にソフト開発会社を設ける場合、その企業の社員教育を資金面で支援するといったものです。ほかにも、高度な技術を持つシステムエンジニアが大連市に転入する際、市に戸籍を入れやすくしました。中国には独自の戸籍制度がありまして、出生地から別の地域に戸籍を移すのは難しいのですが、人材誘致のために特別対応しました。
日本市場の重要性は変わらない
3月に全国人民代表大会(全人代)が「第十二次五カ年計画」を採択しました。この計画に沿った大連市の産業育成策について教えてください。

五カ年計画に沿って、大連市は今後5年間でさらなる発展に舵を切ります。大連は海に面しており、造船業や製造業などが多数あります。これらの産業について、ITを駆使して生産性を高め、競争力のある産業に改造します。
新しい産業の誘致や育成にも着手します。いずれの政策についてもITの活用が前提であり、それを支えるのがソフト・サービス産業です。これからの5年間で、同産業を大連市の大黒柱にします。
ソフト・サービス産業の成長率の見込みを教えてください。
今後5年間は、年平均30%以上を見込んでいます。大連市のソフト・サービス産業の規模は現在500億元(約6250億円)ですが、5年後には少なくとも2000億元(2兆5000億円)、理想としては3000億元(3兆7500億円)まで伸ばしたいと考えています。
野心的な数字ですね。
そう感じるかもしれませんが、達成できると確信しています。というのも、大連市のソフト・サービス産業はまだ発展途中ですから。すべての産業にとって、ITは競争力の強化に不可欠なツールです。全産業の成長に後押しされる形で、ソフト・サービス産業はますます成長できるでしょう。
夏 徳仁(か・とくじん)氏