スマートフォンの急拡大によるトラフィック増大により、国内携帯電話事業者からパケット定額制の見直しを示唆する発言が飛び出している。

 発言の主はソフトバンクの孫正義社長。海外で米AT&Tモビリティや米ベライゾンワイヤレスなどが定額制の撤廃に踏み切っているのを受け、2011年7月の決算会見で「ほんの数%のユーザーがほとんどの帯域を占めている今の状況はフェアではない。遅かれ早かれ我々にも、欧米の事業者のような完全定額制の料金体系を見直す時期が来るかもしれない」と語った。

 料金プランは競争環境の中、事業者の判断によって決まるもの。だが、本当にトラフィック増による追加の負担は、ユーザーだけに求められるべきなのか。

 実はこの問題は世界的にも、インフラ利用の公平性とコスト負担の公平性が問われる「ネット中立性」の問題の一つとして議論を呼んでいる。通信のビジネスモデルが大きく変わり、トラフィックのひっ迫が目前に迫る中、再び関係者の間で議論が求められる時期なのかもしれない。

 ただ、一言でネット中立性と表現しても論点は様々である。大容量のパケットを誘引するサービスプロバイダーによるコスト負担の是非も論点の一つである。さらにネット全般での中立性の必要性を訴える声もある。以下では、識者のインタビューを紹介しつつ論点を洗い出してみよう。

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