企業のBCPも総合的に支援

企業向けでは最近、BCP支援サービスを発表しましたね。

 企業向けの危機管理支援についても当然、今まで個々のサービスとして手がけてきました。今回は、それらを事前準備、災害発生、初動、復旧というような形にまとめてBCPを総合的に支援するサービスとして打ち出すことにしたのです。データバックアップから非常食の備蓄、帰宅支援マップの提供なども含め、必要なサービスは全部グループで持っていますから、それらをワンストップで提供しようというわけです。

前田 修司氏
写真:陶山 勉

海外での事業展開はいかがですか。

 今年4月にニュージーランドに進出をして、進出先は12カ国になりました。やはり今は当然のことながら、中国や東南アジアの市場開拓に力を入れています。それと欧州ではイギリスの拠点が力を付けてきましたので、今後はドイツやフランスでもサービスを展開しようと考えています。

 これらはすべて、セコムが日本で培ったビジネスモデルによる展開です。グループ会社も海外展開を進めていますので、日本で手がけているようなトータルサービスもぜひ海外で推進したいと考えています。

セコムの場合、製造業などとは異なり、ITがビジネスそのものですね。

 その通りです。我々は常に、通信回線やセンサーなどインフラ、技術の変化や進化を全部先取りしてサービスを提供してきました。それがセコムの歴史です。通信回線で言いますと、当初50ビット/秒の専用線から始まって、ISDN、ADSL、そして今では無線です。我々はこうしたインフラや技術の変化のスピード以上の速さで機器やシステムの研究・開発を進めていかなければなりません。後追いでは絶対にダメです。

新たなサービスは、そうした技術トレンドを見極めて開発しているのですか。

 新サービスには、振り込め詐欺といった事象が起きてから開発するものと、何か起きる前から自分たちで考えてつくるものの二通りがあります。

 ただセコムの場合、技術を先読みして、ユーザーニーズの変化も視野に入れながら、自ら考えてつくるサービスの方が多いですね。そのためには、技術動向と社会動向と犯罪・防犯の動向の三つを、いつも見ていなければなりませんので、研究所に専門部署を設けています。

余計な機能はつけない

ITがビジネスそのもののセコムにおいて、情報システム部門はどのように位置づけられているのですか。

 グループ会社にネットワーク周りやデータセンター運営を手がけるセコムトラストシステムズがあり、会計などのバックヤードのシステムもそちらで運営しています。新サービスはセコムの研究所と開発センターでつくりますが、セコムトラストシステムズにはネットワーク周りなどを担当してもらっています。

そうしたサービスやシステムを開発する技術者に必要なことは何ですか。

前田 修司氏
写真:陶山 勉

 技術者として一番大事なのは、達成意欲を持つことです。達成とはコンセプトの実現のことです。例えば、コンセプトが“まる”なら、ほかの人からも“まる”に見えるようなサービスやシステムを作り上げることです。余計な機能を付けて、“四角”に見えるようなものをつくってしまっては、サービスがぼやけてしまい、営業もうまくいきません。これは開発の鉄則です。

 余計なものをつけないというのは、根性が要るのですよ。全体の1~2%にすぎない要件が気になって、みんな余計なものをつけてしまう。でも本来は、レアな要求は後のカスタマイズで対応すればよいのです。技術者はそのあたりを見極めるセンスが必要ですし、周りからいろいろ言われて途中で不安になっても、“まる”を“まる”としてつくる根性が必要なのです。それこそが、達成意欲と言えます。

セコム 代表取締役社長
前田 修司(まえだ・しゅうじ)氏
1975年3月に早稲田大学理工学部金属工学科卒業。81年1月にセコム入社。97年2月に戦略企画室担当部長。97年6月に取締役に就任。2000年6月に常務取締役 グループ技術戦略担当。04年6月に取締役 常務執行役員、研究開発部門長と新事業開発部門長を兼務。04年12月に研究開発企画担当。05年4月に常務取締役、09年6月に取締役副社長に就任。10年1月より現職。1952年9月生まれの59歳。

(聞き手は、木村 岳史=日経コンピュータ)