企業がソーシャルネットワークを業務に活用する事例が増えてきた。こうしたソーシャルネットワークの企業導入を積極的に推し進めているのが米セールスフォース・ドットコムだ。同社は「ソーシャルエンタープライズ」というメッセージを掲げているが、実際の企業にこのメッセージはどのように捉えられ、そして活用している企業にはどのような効果があるのだろうか。同社のCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)であるクレイグ・スウェンスラッド氏に米国の現状などを聞いた。

(聞き手は大谷 晃司=ITpro



米セールスフォース・ドットコム CMO クレイグ・スウェンスラッド氏
米セールスフォース・ドットコム CMO クレイグ・スウェンスラッド氏
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「ソーシャルエンタープライズ」というメッセージは米国ではどのように受け入れられているのか。

 クラウドコンピューティング、モバイルテクノロジー、ソーシャルメディアを活用し、顧客に対してサービスの質をさらに高める、そしてそれが他の会社とは違う差別化につながっていくというメッセージが伝わっている。

 マーク(・ベニオフCEO)も言っているが、ソーシャルエンタープライズを実現するために、次に挙げる三つが必要だ。まず一つは新しい顧客データベース、ソーシャルカスタマープロファイルと呼んでいるが、これを作ること。二つめは、企業の中に社員のソーシャルネットワークを作ること。Chatterがそこでは基本的には使われることになる。三つめは企業やプロダクトが、TwitterやFacebook、mixiといったパブリックなものを通じて顧客と直接つながっていくことだ。

これまでも企業は顧客とつながるためにソーシャルネットワーク以外の手段を利用してきた。メールなども活用している。

 まず今の企業はIT業界で起こっているメガトレンドを考えなければならない。クラウド、モバイル、ソーシャルネットワークの三つを外しては考えられないだろう。メールやグループウエアは私は過去の技術だと認識している。コラボレーションツールとして将来に渡って使われていくことはないと思う。

 既にそうしたことが起こっている。17億人以上のソーシャルネットワークのユーザーの方が電子メールを使っているユーザーを超えたというデータもある。実際の使用を見てみると大学生など20代の人たちはソーシャルネットワークを使ってメッセージをやりとりしている。コミュニケーションのツールとして使っているのだ。さらにモバイルでそれを活用している。企業はそこに気を付けなければならない。

先ほどのソーシャルエンタープライズ実現のためにすべきこととして、ソーシャルカスタマープロファイルを作ることを挙げていたが、企業は実際何をすればいいのか。

 ソーシャルカスタマープロファイルとは、今の状況で知り得る以上の情報、電話番号だとかメールアドレスだとかを超えたものを含めたものだ。通常、電話番号やメールアドレスは名刺で分かる。さらに人々はTwitterやFacebookを使って自分の情報をどんどん発信している。そうした情報を顧客データベースに取り入れることができれば、より高いレベルでのサービス、これまでなかった形の顧客サービスができる。

 そうすれば例えば、営業の人たち、カスタマーサービス、マーケティング、製品開発の担当者が、顧客のことをもっと深く知ることができ、より高い品質のサービスや製品を提供できるようになる。例えば事例としてトヨタ自動車の「トヨタフレンド」が挙げられる。車が単に顧客とつながっているだけでなく、ディーラー、販売店、パーツサプライヤーともつながっており、さらにトヨタの社員ともつながっている。こうすることで、これまで以上のカスタマーエクスペリエンスを実現でき、本当の差別化要因になる。

多くの日本の企業はソーシャルエンタープライズ実現に向けて必要となる一つめのソーシャルカスタマープロファイルを作れていない。

 先ほど挙げた三つの事項は、ステップを踏んで進めるものというより、要素と捉えてもらえればいい。一つめのソーシャルカスタマープロファイルの作成から順番にやる必要はない。ソーシャルネットワークを活用している企業は社員のソーシャルネットワークをうまく運用している。これが重要だと思う。例えば米デルは12万人の社員が参加するソーシャルネットワークを作っている。どの要素からスタートしてもいい。