AXGPを採用したSoftBank 4Gへのオフロードも考えていくのだと思うが。

元々、AXGPはオフロード用の位置付け。だから、AXGPと同じ時分割方式(TD)を使うTD-LTEとの互換性確保にこだわった。これから主流になっていくLTEのチップセットを搭載した端末ならTD-LTEでも使える。その端末からAXGPを使えるようにすれば、本来はLTEで吸収すべきトラフィックを、新しいインフラを打つことなくオフロードできることになる。トラフィックオフロードが目的だから、ユーザーを引きつける仕組みとして、音声通信のときだけ3Gを使うように自動的に切り替える「CSフォールバック」は“must”の機能として提供する。
AXGPはようやくソフトウエアができあがってきた。世界でまだ誰もやったことがないことだから、さすがにいきなり商用サービスというわけにもいかない。まずは今からフィールド試験をやって、半年間くらいうまく動けば商用展開する。そうなれば、LTEが載っているAndroid端末などは、みんなAXGPで収容できるようになる。
一般に言っているLTE、つまりFD-LTEについてはどうか。
もちろんLTE化も進めていく。3GとWi-Fi、AXGPだけでは我々が今後やりたいサービス全部は実現できない。
今のスマートフォンは、そうは言っても電話の延長に過ぎないが、今後はもっと映像を駆使するメディア端末になっていく。現時点では、網側で動画通信にはかなり制限をかけている。本当の意味でメディア端末にするなら、Wi-Fi配下にあるときと同じ感覚で、動画も自在に使えるようにしなければならない。
AXGPの展開、今ある2GHz帯のLTEへの切り替え、そして1.5GHz帯へのオフロードを並行して進めていって、今後3~5年で、やっと我々が想像しているようなサービスを提供できるようになる。
そして先を考えると、再編されることになっている700M/900MHz帯の周波数も必要になると。

900MHz帯はどうしても欲しい。プラチナバンドが早々に出てくることは分かっているから、既に準備としてやれることは何でもやっている。
例えば900MHz帯では高さのある鉄塔が必要になるが、今の我々の設備では高さのある鉄塔は絶対数が足りない。900MHz帯で届く範囲でセルの設計もすべて見直していく必要がある。だから、場所取り・場所づくりはもう始めている。それに合わせた伝送路向けにも、LTEを収容するのに必要になる光ファイバーを手配し始めている。
我々としては、インフラを全部作り直したい。900MHz帯で端から端まで一面作る。その中でトータルのオフロードを考えて2GHz帯の設計を考えていく。持っている周波数をすべてLTE化するなどして周波数利用効率を高めていかないと、3年後、4年後にはパンクしてしまいかねない。
震災に耐えられるインフラにしたいことも理由の一つだ。今のインフラは地震に強いとは言い切れない。2GHz帯で人が住んでいるところにエリアを展開すると、どうしても沿岸部に近い場所に基地局を置くことになる。津波の被害を最も受けやすい地域だ。もっと高台から打つように変えていきたい。台風地域の山間部などの対策もある。
ゼロから作るとして、計画は?
既存の鉄塔のうち2万局くらいは使えるが、その2倍くらいまで基地局を設置したい。つまり、1年半、少し遅れる部分があるから2年くらいだと考えて、その間に2万局を新設する。それも全部50メートル級。だから1兆円ほどの投資が必要になる。それでも、それくらいやらないと、今から新しく作るインフラとしては価値がないと思っている。
宮川 潤一(みやかわ・じゅんいち)氏
(聞き手は,河井 保博=日経コミュニケーション編集長,取材日:2011年10月26日)