COBOLで開発した業務アプリケーションは多くの企業にとって、今なおビジネスの心臓部を担うインフラである。そのCOBOL資産を生かしつつメインフレームからオープンプラットフォームに切り替える「モダナイゼーション」(近代化)に取り組んでいるのが、COBOL開発ツールを手掛ける英マイクロフォーカスだ。同社のスチュアート・マギルCTOに、COBOLを取り巻く現在の環境や同社の製品に関する最新動向を聞いた。

(聞き手は高槻芳=ITpro

企業の業務アプリケーションを取り巻く現在の動向をどのように見ているか。

英マイクロフォーカス CTO スチュアート・マギル氏
英マイクロフォーカス CTO スチュアート・マギル氏

 今までもエンタープライズ分野とコンシューマ分野のITトレンドは相互に影響を与えてきたが、その動きがこの1~2年で加速している。具体的には、コンシューマ領域で進化したテクノロジーがエンタープライズ領域を含めたIT全体のトレンドを牽引するようになったのだ。iPhoneやiPad、Androidといったモバイルデバイスが一般ユーザーの間に普及する中で、それらを業務アプリケーションの実行環境として活用する企業が着実に増えてきた。

 またFacebookやTwitterに代表される新世代のWebアプリケーションが、個人のコミュニケーションスタイルだけでなく、企業システムやビジネスのあり方をも変えつつある。この動きも見逃せない。これらのWebアプリケーションを活用していかに顧客へのリーチを拡大するか、といった課題に多くの企業が取り組んでいる。

こうした中、COBOLで開発したアプリケーション資産を持つ企業はどのような状況にあるのか。

 多くの企業のIT部門は「COBOLによる既存資産を守り続けるか、それともCOBOLを捨て、ビジネス環境の変化に合わせた新たなアプリケーションを構築するか」といった悩みを抱えているようだ。その背景には、「COBOLの資産が(システム移行の)“障壁”になっている」という“誤解”があるように見える。

 COBOLはプログラミング言語というよりビジネスロジックを構築するためのシンプルな言語であり、複雑な処理はランタイム側に組み込める。既存の資産を生かしつつメインフレームからオープンプラットフォームに切り替える「モダナイゼーション」(近代化)の面では、ほかの言語よりも有利なのだ。

 当社は顧客のCOBOLに対する誤解を取り除き、「COBOLによる既存資産を最新のプラットフォームやテクノロジーに対応させ、より一層活用する」という新たな選択肢を提供していく。

「最新のテクノロジーに対応させる」とは、具体的にはどういうことか。

 技術的な観点では現在、COBOLをJava VM(JVM)に対応させる方向で製品を強化している。COBOL開発・実行環境の「Micro Focus Visual COBOL」(Visual COBOL)の最新版「R4」では、COBOLのプログラムをJVMで動作するバイトコードにコンパイルする機能を実装した。Visual COBOLは、オープンソースの「Eclipse」や米マイクロソフトの「Visual Studio」といったIDE(統合開発環境)と連携して、COBOLプログラムを開発するためのツールである。

 COBOLのプログラムをJVMで動かせるようになると、Android端末などモバイル環境に展開しやすくなる。当社は既に、COBOLで組んだ業務アプリケーションをAndroidで動かす環境を用意してある。現在は“テクノロジー・プレビュー”の段階で、9カ月以内に一般企業へ提供できる見通しだ。

 また、Visual COBOLはJVMに先んじて.NET FrameworkやMicrosoft Windows Azureにも対応済みである。開発者は、アプリケーションを実装するプラットフォームの制約に縛られず、新しいビジネスロジックに基づく業務アプリケーションを効率的に開発できる。