「マイクロソフトは『クラウド中心』で事業展開を図る企業になった」。業務アプリケーション事業を統括するキリル・タタリノフ氏は、こう説明する。製品の新機能や使い勝手、販売方法など、全てにわたってクラウドを前提に取り組む。業務アプリケーション「Dynamics」シリーズについては、ソーシャル機能の強化と、HTML5対応による異種機器への展開を加速。「様々な環境で一貫した操作体系や機能を提供する」と表明した。

(聞き手は玉置 亮太=日経コンピュータ

「Dynamics CRM」の販売動向は。

米マイクロソフト マイクロソフト ビジネス ソリューション担当 プレジデント キリル・タタリノフ氏
撮影:中島 正之
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 Dynamics CRMは、マイクロソフト製品の中でも最も成長が著しいものだ。過去29四半期の間、2桁成長を続けている。現在までの利用者数は200万人を超えている。

 当社はオンプレミスとクラウドで同じ機能のCRMアプリケーションを提供する、世界で唯一のベンダーでもある。これは顧客に選択肢をもたらす点で、極めて重要だ。実際、ある顧客企業は最初クラウド版である「Dynamics CRM Online」を導入したが、その後オンプレミス版へシステムを移し替えた。逆にオンプレミス版からクラウド版へと移行した顧客企業もいる。いずれのケースも、既存システムの機能やデータは、そのまま移行できた。

競合他社に対しての対抗策は。

 価格改定や移行キャンペーンなど様々な施策を採っているが、現在のところ特に注力しているのは製品そのものを強化することだ。6カ月ごとに製品の強化を実施しており、最近では2011年10月にアップデートを実施したばかりだ。

 具体的には、ソーシャル技術を使って従業員の業務生産性を向上するための機能を強化した。利用者の発言だけでなく、CRMシステムに登録している商談の案件や文書といった「オブジェクト」をフォローできるようにした。これらオブジェクトが更新されたら、フォローしている利用者は自動的にその通知を受ける。これにより、自分が必要としていたり関心があったりする商談などについて、常に最新の状態を知ることができる。

 重要なことは、こうしたソーシャル機能がCRMシステムの中に統合されていることだ。例えば競合の1社である米セールスフォース・ドットコムの「Chatter」は、CRMとは独立したクラウドサービスであり、顧客企業は別々に導入しなければならない。