最近は、50歳以上の世代を新たな顧客として取り込もうとしているそうですね。
コンビニ業界は、主に若者をターゲットにしてきました。しかし、少子高齢化で若者世代が人口構成に占める割合が低くなっています。逆に50歳以上の世代が増えていますが、この層はコンビニの顧客ではなかったのです。
単純に言えば、若者が減るわけですから顧客も減ります。しかし、そうじゃない。今まで取り込んでなかった世代に来てもらえるような店舗づくりをすれば、マーケットは広がるはずです。
リタイアした世代が、遠くのスーパーまで買い出しに行くことは、あまり考えられません。夫婦二人や単身の世帯だと、まとめ買いしても無駄になることが多くなります。コンビニでその日に食べる分だけを買ったほうが、安くなりますよね。ですからコンビニは、そうした世帯の生活インフラになっていくだろうと思います。
小型店舗で過疎地も市場に
中高年層はハイタッチな接客を好む傾向が強いと思いますが、コンビニにそれができますか。
いいことを聞いてくれました。我々はずっと、商店街の店舗のように、顧客にひいきにされるコンビニを目指してきました。必要なことは、店舗の経営者ならびにスタッフが顧客とコミュニケーションを取ることです。そして、どうしたらまた来店してもらえるのかを考えることです。
ある店舗で、1日3回来店するという年配の男性に会いました。その人は独り暮らしで、買い物のついでに店長やスタッフと話すのが生き甲斐なのだそうです。こうした独り暮らしの高齢者が大勢住む地域はたくさんあります。そう考えると、過疎地や買い物が不便な地域も新たなマーケットとして捉えることができます。
そう言えば、小型店舗の開発を進めていますね。
例えば日販15万円とか20万円の店舗は、採算が合わないため閉鎖するしかありませんでした。でも、建設費に3000万円、4000万円をかけるのではなくて、1000万円以下で建てることができたら、15万円、20万円の日販も採算が取れます。そうすれば、買い物不便地域の生活者に対しても貢献できるわけです。
1年半ぐらい前からそうした店舗の開発を試みてきたところに、東日本大震災が発生しました。広域で買い物に難渋する事態になったわけです。そこで被災地に5坪単位の店舗をつくりました。売り上げはあまり期待しておらず、仮設住宅につくった店舗では、日販10万円ぐらいだろうと予想していました。実際は15万円も売れており、採算が取れています。
小型店舗をこれから本格的に展開するわけですか。
はい。小型店舗を過疎地や買い物不便地域に出していきたいと思います。
ただ、商品供給や物流トラッキング、店舗オペレーションは重装備ではできません。だからこそITが重要となります。いつ何が売れているかを瞬時に把握できるシステムがあってこそ、商品構成を厳選し少人数のスタッフで運営できるのです。
クラウドを国内に置く必要なし
アジアでの出店も強化していますが、システム面ではどのように対応しているのですか。
我々は他のチェーンに先行して海外に進出しています。特にアジアでは、単なる看板貸しではなく、現地企業との合弁事業として展開しているという意味において、ファミリーマートがコンビニの中で最大規模です。
海外事業でもITはもちろん重要ですが、最初から日本で構築しているようなシステムを導入するのはコスト面で重すぎるし、うまく活用するにはまだ早すぎます。そこで我々が考案したのが「ファミマ・スターター・パック」です。
100店舗、200店舗の段階では、受発注や簡単な店舗会計、POSレジのデータ収集といった基本的な機能で十分です。これを導入して日本の本部のシステムに接続して管理しています。本部のシステムはグループのプライベートクラウドの位置づけです。
ただ、これからは逆の発想も必要です。なにもクラウドを東京で運用することはないでしょう。タイのバンコクなどにサーバーを置いてもよいわけです。
システムや情報システム部門を海外に移すわけですか。
海外にサーバーを移せば、国内のシステム要員の3分の2を削減できるしょう。劇的なコストダウンが可能になります。いずれは、海外にシステム本部を置く形になり、現地でシステム要員を育成することになるでしょう。
いつ頃の話ですか。
そんな遠い将来ではないと思います。
上田 準二(うえだ・じゅんじ)氏
(聞き手は、木村 岳史=日経コンピュータ)