米AMDは2011年11月14日、サーバー向けの新プロセッサ「Opteron 6200シリーズ」を発表した。特徴は、世界で初めて一つのプロセッサに16コアを搭載したこと。米AMDのジョン・フリー プロダクト・マーケティング・ディレクターは「Opteronのコア数は今後もさらに増やしていく」と語る。

(聞き手は吉田 洋平=日経コンピュータ

米インテルのx86プロセッサと比較した場合、Opteron 6200シリーズの優位性はどこにあるか。

米AMD プロダクト・マーケティング・ディレクター ジョン・フリー氏
米AMD プロダクト・マーケティング・ディレクター ジョン・フリー氏
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 「Xeon 5600番台」と比較した場合、Opteronのほうがコアが多い。Opteron 6200は最大16コアで、Xeon 5600番台は最大6コアだ。一方、Xeon 5600番台は1つのコアを論理的に2つあるように見せかける「ハイパー・スレッディング・テクノロジー」があるので、コア数の2倍のスレッドを実行する。

 この違いは、当社とインテルで開発思想が異なっていることによる。当社は小さなコアを沢山作り、そこに処理を割り振っており、インテルは非常に大きなコアを作って2つのスレッドを走らせている。

 インテルのハイパー・スレッディング・テクノロジーの課題は、この機能を利用してもパフォーマンスが十分に発揮できないケースがあることだ。処理をスレッドに効率良く分けることができるアプリケーションならばいいが、整数計算のように処理をうまく分けられないものもある。

 当社としては沢山のコアを搭載するほうが、高いパフォーマンスを発揮できるケースが多いと考えている。

Xeon E7との違いはどう考えているか。E7は10コアを搭載した8つのプロセッサでメモリー空間を共有して処理する「SMP(対称型マルチプロセッシング)」が可能だ。同時実行スレッド数はOpteronより多い。

 Opteron 6200の場合、最大で4プロセッサのSMPが可能で、同時実行スレッド数は64だ。同時実行スレッド数で比較するとインテルのE7より劣っているが、コスト効率はOpteronのほうがいい。同じ処理容量で比較すると、Opteronの価格はE7の2分の1から3分の1だ。

 さらに、インテルのE7が特徴としている、5つ以上のプロセッサを搭載できるという方向性自体に、あまりニーズがないという問題もある。現在、4プロセッサまでのモデルで市場の99.9%をカバーできる。8プロセッサを搭載したモデルは四半期に500~1000台程度しか売れない。

Opteronのコア数は今後も増やしていくのか。

 はっきりとした数は言えないが、ソフトウエアはより多くのコアを必要とする方向に進んでいる。現在の16コアが十分な数だとは思っていない。我々はニーズに応え、コアの数を今後も増やしていく。

サーバー向けのGPUについてはどう考えているか。

 AMDではサーバー向けにFireStreamという製品を出している。サーバー分野でのGPU利用はまだ始まったばかりだと考えており、より効率よくGPUを使うにはアプリケーションの改善が必要だ。現在サーバー向けGPUの市場は小さいが、今後数年でアプリケーションの改善が進み、市場も大きくなるだろう。

GPUの利用が適しているのはどんなアプリケーションか。

 ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の分野だ。石油やガスの貯留地を探索する際のモデリングや、衝突実験のシュミレーション、流体力学における空気や水の流れの確認などが挙げられる。

 データベースやWeb、クラウドなどには、現在のところGPUを使うメリットはあまりない。GPUは非常に高度にパラレル化された演算処理を実行したい場合に有効だ。