英StorMagicは、VMware仮想サーバーの高可用性(HA)構成を安価に実現するミドルウエア「StorMagic SvSAN」を開発するベンダーである。2011年10月には、新バージョン「StorMagic SvSAN v.4.5」をグローバルで出荷した。国内では、ネットワールドが2010年12月に従来版のv4.4を提供。v4.5は2011年11月中に提供開始する。

 StorMagic SvSANの実態は、VMware上で動作する仮想アプライアンスの形態をとったiSCSI共有ストレージ(iSCSIターゲットストレージ)である。VMware ESXを導入したサーバーきょう体の内部で、ESXや仮想サーバーから外部ストレージとして利用する。最大の特徴は、複数台のVMware ESXに導入したStorMagic SvSAN同士の間で、データをリアルタイムにミラーリングできること。これにより、きょう体の外部に共有ストレージを用意することなく、VMwareのHA構成やvMotion(仮想サーバーの移動)が可能になる。

 同社でCEO(最高経営責任者)を努めるHans O'Sullivan氏に、新バージョンが仮想サーバー環境に与えるインパクトを聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro


新バージョン「StorMagic SvSAN v.4.5」の特徴は。

英StorMagicでCEOを努めるHans O'Sullivan氏
英StorMagicでCEOを務めるHans O'Sullivan氏

 新バージョンでは、VMware仮想サーバーをHA構成で運用する際にかかるコストを大きく下げた。サーバーが複数のブランチオフィスに分散している企業にとっては、すべてのブランチオフィスで安価に仮想サーバーのHA構成を実現できるため、大きなメリットになる。

 従来、StorMagic SvSANを使ったVMwareのHA構成では、運用管理ソフトのVMware vCenterが必須となっていた。HAによって仮想サーバーを復旧(フェールオーバー)する際に、VMware vCenterが同一セグメント上にないと不都合が生じていた。

 このため従来版では、HA構成で使う2台のVMware ESXに加え、VMware vCenter用に1台のVMware ESXを用意する必要があった。ところが、VMware ESXを3台構成で使う場合、VMwareのライセンスとして、高額なライセンス「VMware Essentials Plus」(ネットワールドで60数万円)が必要だった。

 そこで、StorMagic SvSANの新バージョンでは、同一ロケーションにVMware vCenterを置かなくていいように改善した。リモートにVMware vCenterを配置してもよいし、そもそもVMware vCenterを使わなくてもよくなった。

 これにより、新バージョンでは、HA構成で使う2台のVMware ESXだけで運用できるようになった。VMware ESXを2台構成で使うのであれば、安価なライセンス「VMware Essentials」(ネットワールドで20数万円)を利用できる。

 ただし、最安価のVMware Essentialsでは、VMware HA機能を利用することができない。このため、StorMagic SvSANの新バージョンでは、StorMagic SvSAN自身がHA機能を提供するようにした。StorMagic SvSANのHA機能を使って、VMware HA同様のホットスタンバイが可能だ。

新バージョンを出すまでの経緯と市場動向は。

 これまでは、StorMagic SvSANを、VMware Essentials Plusのライセンス規模に最適化されたストレージソフト、というメッセージで売ってきた。同ライセンスを導入する小規模なHAシステムを、より安価に実現する製品として、StorMagic SvSANを位置付けてきた。

 ところが、ここ1年ほどで、VMware Essentials Plusのシステム規模に合致する共有ストレージ製品が登場してきた。ハードウエアの共有ストレージが安価になるにつれて、これらとStorMagic SvSANが比較検討されるケースが増えてきた。

 こうした経緯から、より低価格なHA構成を実現するために、VMware Essentialsのライセンスでも利用できる新バージョンを開発した。2011年8月に開催された「VMworld 2011」で新バージョンを発表してからすぐに、大量のブランチサイトを持つ大手企業10社ほどからコンタクトがあった。

 実際に導入したユーザーの評価も高い。例えば、米Credit Plus銀行は既存ユーザーだが、v4.5にバージョンアップしてシステムを簡素化した。また、発電制御システムや軍隊など、コンディションがシビアな場面でも多く使われている。