仮想アプライアンスの作成ツール「UForge」を提供するフランスのUShareSoftは2011年9月、マキシマイズと提携し、日本での事業を本格的に開始した。UForgeを使うことで、仮想化ソフトやIaaSベンダーの“ロックイン”を防ぎ、クラウド上のアプリケーションの構築と管理を簡素化するという。同社CEOのAlban Richard氏に、UForgeの機能と日本での展開予定について聞いた。

(聞き手は矢口 竜太郎=日経SYSTEMS



仏UShareSoft CEO Alban Richard氏
仏UShareSoft CEO Alban Richard氏

UForgeを利用すると、クラウド環境でのシステム構築がどう変わるのか?

 UForgeを利用する最大の利点は、実装する仮想マシンやIaaS(Infrastructure as a Service)に依存せずにシステムを構築できるようになることだ。仮想化ソフトやIaaSベンダーの「ロックイン(特定ベンダーの製品・サービスから他のベンダーのものに変更できない状態)」を防ぐことができる。順を追って説明しよう。

 UForgeはマルチプラットフォーム対応の「仮想アプライアンス」を作成するためのツールだ。利用するOSの種類、CPU、メモリー、ミドルウエアなどの組み合わせを仮想アプライアンスとして保存しておける。仮想アプライアンスを作成した後に、実装する仮想マシンやIaaSをUForgeで選べば、各実行環境への設定作業を自動で終えることができる。

 仮想マシンやIaaSといった実行環境ごとの設定方法の差異はUForgeで吸収する。対応するOSは30種類、対応する仮想化ソフトやIaaSとしては、VMware、Amazon EC2、Cloud.comなど主要なものを網羅している。

 構築した仮想アプライアンスがマルチプラットフォーム対応であるため、ベンダーロックインを回避しやすい。もし、UForgeを使わなければ、特定の仮想マシンやIaaSに実装しているシステムを別の環境に移すのは手間がかかる。このため、ベンダーロックインになりがちだった。

UForgeを使うと、チューニング作業や管理の手間も減るのか?

 仮想アプライアンスを作るときに、OSやミドルウエアを最小構成にする「オプティマイザー」という機能がある。この機能により、チューニングの手間を減らすことができる。

 例えば、仮想アプライアンスとしてCentOSとApacheを選んだとする。ユーザーが選択したバージョンのApacheを動かすには、CentOSのどのモジュールが必要かをオプティマイザーで判断し、最低限必要なものだけをインストール可能だ。条件によっては、オプティマイザーを実行する前後で、インストールするモジュール数を10分の1にまで減らせる。

 OSやミドルウエアのモジュールを最小限のインストールで済ませることは、稼働後のパフォーマンス向上のために重要だ。通常は、モジュールが足りなくて動作不能になることを恐れて全モジュールを導入してしまう。オプティマイザーを使わずに、必要最小限のモジュールを見極めようとすれば、膨大な量のドキュメントを参照しなければならない。こうした作業を自動化できる。

 仮想アプライアンスにすれば、アプリケーションの管理も楽になる。一度登録した仮想アプライアンスはすべてUForge上に保存できるので、過去に利用していた仮想アプライアンスの設定に戻したいときは、いつでも戻せる。

日本での提供形態は?

 日本市場に向けて二つの提供形態を用意した。一つは開発者向け「UForgeオンライン」だ。これは、クライアントソフトをダウンロードしてもらう。一部、機能制限があるものの、日本向けには無償で提供する。

 もう一つは、クラウド事業者向けの「UForgeクラウドプロバイダー・エディション」である。IaaSなどの事業を手掛けるクラウド事業者が、自社サービスにUForegeの機能を組み込んで提供することを想定している。ライセンス料は1000万円以上だが、期間限定でレベニューシェアなどのライセンス形態も用意している。