米Success Factorsは、SaaS型の人材管理アプリケーション「Business Execution Software」(BizX)を提供するベンダーである。企業戦略を成果につなげることを目的に、社員の実績管理や人材管理などの情報系の人事機能を提供している。ITproは2011年10月19日、同社幹部に人材管理の意義と求められる機能について聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro


Business Execution Software(業務遂行ソフト)とは何か。

米Success FactorsでField Operations担当VPを務めるJay Larson氏(写真左)と、サクセスファクターズジャパンで代表取締役社長を務める木下雄介氏(写真右)
米Success FactorsでField Operations担当VPを務めるJay Larson氏(写真左)と、サクセスファクターズジャパンで代表取締役社長を務める木下雄介氏(写真右)

 すべての企業には戦略(ストラテジ)がある。そして成果(リザルト)を生成するとともに、成果に対して責任を担っている。戦略を立てることは難しくない。成果に責任を持つことも難しくない。難しいのは、戦略を成果に結びつける部分だ。

 米Success Factorsのソフト「Business Execution Software」(BizX)は、戦略を成果に結びつける部分を支援する。大きく三つの機能を提供する。(1)社員の行動を活性化して雇用状態を継続するための機能、(2)目標を設定して企業全体で共有し、戦略に沿って業務を遂行できるようにする機能、(3)学習と育成を支援する機能、---だ。

 顧客企業がBizXを受け入れる理由は簡単だ。BizXの導入によって、社員の生産性が平均して3%向上するからだ。生産性が3%高まると、大きな企業では何百万ドルもの貢献につながる。典型的な企業では、人件費はOPEX(事業運営費)の4割を占める。

 各業界のリーダーは、人件費に大きなお金を投資している。社員のパフォーマンスを最適化しない限り、企業のパフォーマンスは最適化できない。BizXは、まさにこの部分を支援する。企業の戦略に沿ったかたちで社員が業務を遂行できるようにすることで、人件費のROI(投資収益率)を高める。

BizXは市場で受け入れられているのか。

 米Success Factorsは急成長している。売上成長率は、2011年第2四半期に前年同期比で48%増。2011年第3四半期には、前年同期比で70%増える。APAC(アジア太平洋地域)の成長率は特に著しい。正確な数値は持っていないが、APACの売上額は毎年、前年比で2倍以上になる。

 BizXはグローバルで展開しており、34言語168カ国で使われている。導入数は、企業数で3500社、ユーザー数で1500万人。企業規模は、最小で3人から最大で200万人までと幅広い。ボリュームゾーンは、1000~3000人ほどの中~大規模の企業だ。

社員の生産性が3%上がる仕組みは。

 いくつかある。まず1番目に、各社員が、自分がやるべきことに集中できること。2番目に、各社員が、しっかりとトレーニングを受けて、自分の仕事を実現できること。3番目に、才能のある社員を企業内に保持し続けられること。4番目に、パフォーマンスが芳しくない社員を特定し、こうした個々の社員のパフォーマンスを向上させられることだ。これらによって、企業は自らの戦略を市場で実行できるようになる。

 コンサルティング会社の米McKinsey & CompanyがBizXの顧客を調査した結果によると、BizXの導入によって、もっとも優秀な人材(規定値の2倍の成果を出せる人材)の数が5%増え、もっとも芳しくない人材(規定値の2分の1の成果しか出せない人材)の数が14%減っている。全体の平均では生産性が3%上がっている。

どのようにして社員の業務を戦略に沿わせるのか。

 まずは、米Success Factorsと顧客企業が話し合って、顧客企業の事業戦略を特定する。こうして、個々の顧客企業のニーズに合わせてコンフィグ設定を施した、専用のBizXを用意する。BizXはマルチテナント型のSaaSアプリケーションだが、実際に、3500社のBizXの画面は、それぞれ異なっている。

 企業戦略をBizXに反映したあとは、企業側でゴール(目標)の内訳を設定する。このためのツールを用意している。こうして、やるべきことや目標値を、事業部門や個人へと展開していく。一方、管理職は、パフォーマンスや業務の進ちょくを監視する。

 通常、大企業にとって、ゴールを設定することは大変な作業だ。BizXはゴール設定を支援できるため、市場で大成功を収めている。米Success Factorsには、戦略に沿って個々のゴールを設定するための方法論がある。

BizXの新機能は。

 「Jam」と呼ぶ、ソーシャルラーニング・ソフトを用意した。専門知識を持っている社員が自分で動画コンテンツを作成し、これを会社全体で共有できるようにする。このためのソーシャル機能を提供する。買収した米CubeTreeのソーシャルネットワーク・アプリケーション技術を利用した。

 Jamは、学習という側面で、ブレークスルーになる。なぜなら、会社のあちこちに存在していた専門知識を特定し、キャプチャし、共有できるような技術は、これまで存在しなかったからだ。

 企業にとってトレーニングのニーズは大きい。一方で、トレーニングにかけられるお金は小さい。社内にすでに存在する専門知識を活用すれば、大きな効果が得られる。実際に、顧客企業の社員たちは、Jamを気に入って使ってくれている。「自分が持っている専門知識を皆が使ってくれるチャンス」だと捉えているからだ。

 この10月に米国Las Vegasで開催されたイベント「HR Technology Conference & Expo」でもJamを紹介した。