「M2M」(machine to machine)の世界共通規格を固めようと、ETSI(欧州電気通信標準化機構)や米国のTIA(電気通信工業会)が標準化活動を進めている。M2Mとはセンサー同士がデータをやり取りして、システムの自動化や効率化などに生かす技術のこと。いわゆる“ビッグデータ”を産み出す起点として、世界各国のITベンダーや通信事業者がM2Mサービスの市場拡大に本腰を入れ始めている。ETSIのM2M標準化会議で議長を務めるEnrico Scarrone氏に、規格策定の狙いや最新の活動状況を聞いた。

(聞き手は高槻 芳=ITpro



ETSIのM2M標準化会議で議長を務めるEnrico Scarrone氏
ETSIのM2M標準化会議で議長を務めるEnrico Scarrone氏

ETSIのM2M標準化会議の目的や活動内容を教えてほしい。

 M2Mの分野では現在、ITベンダーがそれぞれ独自のインタフェースに基づいて製品を提供してきた。また同じベンダーの製品であっても、スマートメーターや車間通信といった製品セグメントによって仕様が異なることもある。このためM2M製品同士の相互接続性を確保するのは難しく、M2Mの普及に当たって大きな課題となってきた。

 そこで我々は、センサーを備えたデバイスと、各デバイスの情報をネットワーク経由で集約し処理するプラットフォームとの間に、相互接続用の中間インタフェースを用意しようとしている。具体的にはデバイス側に、クライアント用アプリケーションとミドルウエアを実装する。このクライアント側のミドルウエアと連携するための機能を、プラットフォーム側にも実装する。

 これにより、M2Mのアプリケーションはデバイスの種類や、利用するネットワークの種類を問わずにデータを収集できるようになる。そうなることでM2M関連の製品・サービスのコストが下がり、市場が拡大していくと信じている。

現在、標準化活動はどこまで進んでいるのか。

 我々は過去3年近くに渡って標準化作業に取り組んでおり、現在は規格のリリースに向け、最終コーナーを回った段階だ。実際には2011年9月12日から16日にかけて重要な会合を開催した。NECの協力を得て日本で開いたこの会合で、機能面のアーキテクチャについて定義した。続いて年内には、通信インタフェースの仕様についても標準化する予定である。

ETSI以外にも、M2Mの仕様を標準化しようという動きが世界的に広がりつつある。製品間の相互接続性を高める上では、他の標準化団体との連携も必要になりそうだ。

 我々は標準化活動の初期から、そうしたことを念頭に置いて様々な取り組みを進めてきた。我々自身の活動と並行して、他の標準化団体と仕様をすり合わせていくためのパートナーシッププロジェクトを展開している。また、標準化活動の成果であるドキュメント類を、積極的に他の標準化団体に向けて公開している。

 我々が定める仕様自体も、独自路線で固めるつもりはない。例えば「Open Mobile Alliance」(OMA)などが策定している規格を取り込み“再利用”する。またM2M標準化会議そのものも、グローバルなメンバーで構成されている。欧州だけでなく日本や米国などの通信事業者やメーカーが数多く参加しており、共同で仕様を検討しているところだ。