米Brocade Communications Systemsは、FC-SANとイーサネット(Ethernet)のベンダーである。昨今では、サーバー仮想化によって生じる管理の複雑さを簡素化することを狙ったTRILL準拠のスイッチ機器を販売しているほか、OpenFlowなどの試みに対してもコミットしている。ITproは2011年10月11日、同社のCEOとCTOに、仮想化がネットワークに与える影響や、OpenFlowへの取り組みを聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro


今日のITとネットワークのトレンドは何か。

米Brocade Communications SystemsでCEOを務めるMichael Klayko氏(写真右)と、CTOを務めるDave Stevens氏(写真左)
米Brocade Communications SystemsでCEOを務めるMichael Klayko氏(写真右)と、CTOを務めるDave Stevens氏(写真左)

CEOのKlayko氏: 仮想化技術が、データセンターだけでなくエンタープライズ(企業情報システム)全体に及んでいる。今後は、あらゆるエンタープライズが、何らかのクラウド戦略を必要とする。仮想化を前提として設計されていない旧来のデータセンターは、今後5年間で古くなる。

 米Brocade Communications Systems(以下、Brocade)は、将来の仮想化技術に対処できるように、製品開発や標準化活動に取り組んでいる。OpenFlowへの取り組みは、こうした例の一つだ。2012年2月には、日本オフィス内にOpenFlowの技術検証施設「OpenFlow Solutions Lab」を開設する。

CTOのStevens氏: 現在のITシステムは、モバイルやリモートでのシステム利用が増え、高度に分散化されている。こうした中、アプリケーションのワークロードを、適切なデータセンターの適切なサーバー機上へと効率よく配置する需要が生じている。これが「Virtual Enterprise」(仮想エンタープライズ)の考え方だ。

 私たちITベンダーが過去の20年間にわたって提供してきた製品は、いずれも仮想エンタープライズを実現するためには不十分であり、機能のアップグレードが必要だ。Brocadeでは、こうしたネットワークの新たな需要に応える製品を用意している。これらを支えるアーキテクチャが「CloudPlex」だ。

仮想化がITやネットワークに与える具体的な影響は。

Stevens氏: まず、仮想サーバーが、異なる物理サーバーへと移動可能になる。これにより、ネットワーク接続型ストレージが主流になるなど、ストレージの形態が変化する。次に、ネットワークが高速化する。1台の物理サーバー上で10個を超えるワークロードが動作するので、これに応えるよう、I/Oへの要求が高まる。

 ネットワークアーキテクチャの上では、データセンターがシンプルになる。仮想化環境の下では仮想サーバーが物理サーバー間を移動するので、レイヤー2ネットワークはフラットであるべきで、サーバー間通信の東西(East-West)トラフィックが主流になる。これを実現するのがEthernet Fablicだ。

IT業界内でのEthernet Fablicの動向は。

Stevens氏: IT業界の誰もが「仮想化によってトラフィックのパターンが新しくなっているので、これに対処するためにEthernet Fablicが必要になっている」と認識している。

 異なるのは、Ethernet Fablicの仕組みと、実装の速度だ。Brocadeは3~4年前からEthernet Fablicを開発してきた。BrocadeのほかにもEthernet Fablic製品や方式があるが、それらはPowerPointの資料だけしかない。商用のEthernet Fablic製品を販売・出荷できているのはBrocadeだけだ。

Klayko氏: Ethernet Fablicの競合がいることは良いこと。競合他社がEthernet Fablic製品を出荷することによって認知度が高まるからだ。Ethernet Fablicはすでに「使うのか使わないのか」ではなく「いつ使うのか」の問題。ほとんどの顧客がEthernet Fablicに関心を示している。実際、2011年のBrocade EBC(Executive Briefing Center)の利用回数は、2010年比で800%向上した。