最初にパラダイムシフトの話をしましたが、今はまだ初期の段階です。今後いろいろな動きがあると思います。その変化に対応する余地を残しておく意味でも、ベンダーロックインを避けることのできる柔軟なアーキテクチャーが必要です。そして現段階で、そうしたアプローチのソリューションを提供できるのはレッドハットだけだと自負しています。
最近Hadoopなどクラウド生まれの新しいオープンソースソフトが続々と登場していますが、レッドハットとしては、どのように関与していくのですか。
そうしたWeb2.0関連の企業などが生み出すテクノロジーの新た潮流に対しては、緊密に連携していくという方向で当然考えています。例えばクラウド関連の新たなインフラには、Hadoopベースのものがたくさんあります。このHadoopは非常によい例ですが、一般企業も次世代のコンピューティング環境のなかで、オープンソースをどのように活用するかをいろいろと検討しています。
ですから我々としては、そうした最新のテクノロジーを持つ企業とはパートナーとして協業しており、場合によっては買収して傘下に納めたりもしています。
すでにOpenShift ではオープンソースのドキュメント指向データベース「MongoDB」をサポートしていますし、オープンソースとして開発されてきたインメモリーデータグリッドも我々の手で市場に投入しています。
お話しいただいたクラウド戦略で、レッドハットの成長に高い期待を寄せる株主や投資家を納得させられますか。というのも、基幹系にLinuxを使う日本のユーザー企業は、レッドハットが特定のハードベンダーに買収されることを懸念しています。
IBMやHPがどのように考えているかは全く分かりませんし、将来のことも分かりません。しかし、一つだけ言えることは、レッドハットの価値はその独立性にあるということです。そのことの重要性について、ベンダーも認識していると思います。
それに、もし実際に買収しようとすると、今の時価総額から言ってかなり高い買い物になりますよ。私が以前COO(最高執行責任者)を務めていたデルタ航空の株価より高いですからね。
今回のクラウド事業の強化で、株価はもっと上がりますか。
もちろんです。
日本独自のLinux保守は継続
Linuxでは最新バージョンではなく、特定の古いバージョンに固定して5年間パッチを提供するなど、日本だけの特殊なサポート契約を認めていますが、今後とも継続するのですか。
日本企業は非常に重要な顧客です。それに、レッドハットは「とにかく顧客ありき」というポリシーを持った企業ですから、もしそれが顧客のリクエストであれば、対応していくのは当然であると考えています。
ただ、技術革新の観点で言えば、オープンソースが一番速いのです。その速い技術革新から顧客がどのようにベネフィットを享受していくかということが、最も重要な点ではないかと思います。
ジム・ホワイトハースト 氏
(聞き手は、木村 岳史=日経コンピュータ)