米Embarcadero TechnologiesのDavid Intersimone(デビッド・インターシモーネ)デベロッパ・リレーションズ担当副社長が、2011年9月6日に開かれる第20回エンバカデロ・デベロッパーキャンプに合わせて来日し、日経ソフトウエアの取材に応じた。同社の日本法人が9月1日に発表した「Embarcadero RAD Studio XE2」は、1995年にDelphiが登場して以来「最大の新リリース」で、「その内容を知った開発者からスタンディングオベーションで迎えられている」と述べた。

(聞き手は原田 英生=日経ソフトウエア


写真●米Embarcadero TechnologiesのDavid Intersimoneデベロッパ・リレーションズ担当副社長。MacBook Proでデモを見せてくれた

東日本大震災以後、初の来日だね。

 震災の時は眠れずにずっとテレビを見ていた。娘は昨年まで東京の大学にいたので日本に友人が多く、一生懸命連絡を取ろうとしていた。巨大な地震が起こってしまい、とても残念だ。いつも被災した人のことを思っている。たくさんのデベロッパーの仲間がいる日本にまた来ることができてうれしい。

今回の新製品「RAD Studio XE2」は、新しいコンポーネントセット「FireMonkey」、64ビットWindowsへの対応、Mac OS XとiPhoneへの対応など新機能が盛りだくさんだ。

 RAD Studioは大体、年に1度バージョンアップしているが、今回の「RAD Studio XE 2」の開発には2年以上、いやもっと年数がかかっている。コンポーネントベースのネイティブ開発をマルチプラットフォームで行える、アプリケーションプラットフォームのよりよい形ができた。以前Kylixでもやろうとしたことだが、今回の製品はより広く使われるだろう。

DelphiとC++BuilderでGUI(Graphical User Interface)アプリケーションを作るために、これまで提供されていたのはVCL(Visual Component Library)だった。今回新しいコンポーネントセットとして「FireMonkey」が加わった。この二つはどう使い分ければいいのか。

 VCLは32ビット、64ビットのWindowsアプリケーション開発に利用できる。今回64ビット対応になったし、見た目を変える「スタイル」機能を追加した。VCLで構築したソースコード資産があるなら、VCLを使い続けるのがいいだろう。

 FireMonkeyはVCLと同様に、Delphi言語で書かれており、開発者はそのソースコードにアクセスできる。EXEファイルに静的リンクできるというVCLの特徴もそのままだ。FireMonkeyには数えきれないほどのコンポーネントがある。文字を入力できる「Edit」などの基本的なコンポーネントに、エフェクト(視覚効果)のコンポーネントを組み合わせて使えるのだが、エフェクトだけで50くらいあったと思う。FireMonkeyでは、DirectXとOpenGLを使い、様々なエフェクトを利用できる。しかもノーコードでだ。コンポーネントをドロップしてプロパティを設定するだけでいい。リッチネスとスピードをビジネスアプリケーションにもたらす素晴らしいコンポーネントだ。

 FireMonkeyは、32ビット/64ビットのWindowsアプリケーションで使えるのはもちろん、32ビットのMac OS Xアプリケーション、iOS(iPhone)アプリケーションで利用できる。リッチで美しいアプリケーションを作りたい、マルチプラットフォームにしたい、そういう場合はFireMonkeyを使うといい。リッチだけど、Webでもなく、ブラウザーでもなく、ランタイムも必要ない。すべてが実行ファイルに入るネイティブなリッチアプリケーションを作れる。

FireMonkeyは独自に開発したものか。

 2010年10月に、ロシアのKSDevという会社を買収して、そこのコードを利用している。ただ、複数あった製品を統合したり、データアクセスの部分を追加したりして、既存の製品とは異なるものになっている。KSDevのEugene A. Kryukov氏は、当社の開発チームの一員として活動している。ロシアだけでなく、ルーマニア、カナダのトロント、米国スコッツバレーなど、グローバルな開発チームになっている。製品をパワーアップできるのは、Embarcaderoに買収されたからだ。

今回はコンパイラが増えた。

 これまでは、Delphiの32ビットWindows向け、C++の32ビットWindows向け、.NET Framework向けのPrism(Oxygene)コンパイラの三つだった。今回のRAD Studio XE2では、Delphiの32ビットMac OS X向け、64ビットWindows向け、C++の32ビットMac OS X向けを追加した。さらに、iOSのためには、Free Pascalを組み込んでいる。合計7個のコンパイラを駆使してクロスプラットフォームのネイティブ開発ができる。今後の計画としては、C++の64ビットコンパイラ、ARM CPU向けのコンパイラ、Android向けのコンパイラなどを用意していきたいと思っている。

 ただ、コンパイラだけでクロスプラットフォームと言っているわけではない。RadPHPでは、PHPアプリケーションをiOSとAndroidのモバイルアプリケーションに変換する機能を追加した。データ接続に使う「DATASNAP」では、iOS、Android、Windows Phone 7、BlackBerryからのデータアクセスを可能にした。