日経情報ストラテジーは「CIOオブ・ザ・イヤー2011」に、パーク24の川上紀文執行役員業務推進本部長を選出した。社外から招かれた川上氏は、立地が全ての不動産ビジネスと思われがちだった駐車場事業を、現場を巻き込んだIT(情報技術)の活用で変革。その点が選考委員に高く評価された。以下はその受賞記念インタビューである。

(聞き手は西頭 恒明=日経情報ストラテジー

パーク24 執行役員 業務推進本部長 川上 紀文氏
パーク24 執行役員 業務推進本部長 川上 紀文氏
写真撮影:山西 英二

まず率直な感想をお聞かせください。

 当社が手がける駐車場ビジネスは世の中の人から見て、分かりにくいものだと感じています。裏側でどんな仕組みが動いているのか、想像しにくいでしょうから。ましてや、ITが競合他社との差異化の要素になっているとは考えにくい。

 そうしたなかで私たちがやってきたことが、今回の受賞で世間に認められたといいますか、受け入れられたと思えて、本当にうれしいです。私個人というより、「タイムズ」という駐車場事業そのものを評価してもらえたと感じています。

選考理由として、IT活用によるビジネス変革の推進が挙がりました。

 タイムズの運営に、当社の情報システムである「TONIC(トニック)」は欠かせません。選考委員の皆さんには、タイムズが他社の駐車場と違うのは、裏に駐車場のPOS(販売時点情報管理)とでもいうべきTONICがあるからなんだという認識を持っていただけたのではないでしょうか。それはつまり、TONICの部隊が社内で無くてはならない存在になったと評価されたということでしょう。

 私はITを使えばタイムズがどう変わっていくのか、この先の世の流れに対して次にどんなITが必要になるのかといったロードマップを社員に示すようにしています。そのうえで今はこの段階だから、来年はここまで伸ばそうよと伝えます。

 例えば、当社は4~5年先に駐車場の収容可能台数を現在の35万台から50万台まで伸ばそうとしています。そう言うとものすごい大きな話に聞こえるかもしれませんが、ゼロから事業を起こすのと、1万台を10万台にするのと、今の35万台を50万台にするのとでは事業ステータスが異なります。

 実は今動いているTONICの仕組みは、50万台の収容可能台数に耐えられます。インフラとして、それだけのスケーラビリティー(拡張性)は用意してあるんです。ですから、あとはサービスの拡充に合わせて個々のアプリケーションをTONICに載せていけばいい。こういう話をするわけです。

アプリケーションのアイデアも川上さんの部門から出すのですか。

 両方あります。私たち業務推進本部から現場に「こんなデータがあるんだけど、何かに使えませんかね?」と話を持っていくこともあります。社内営業に出るわけです。すると営業部門などから後日、「それならこんな使い方があるよ」と話があったり、「こんなデータ分析はできるのか?」と尋ねられたりします。そこで現場とのコミュニケーションが発生するわけです。

 私は自分の部下に「データ分析などの依頼が来たら、絶対にノーと言うな」と話しています。どんな依頼やアイデアも「それも一つあり得るな」と思えなければ駄目なんです。そうしなければ、現場のニーズは上がってこないでしょう。

 当社のように24時間365日、無人で駐車場を管理している企業には、ITの匂いがする案件が社内にいくらでもあるんです。ITが関係しそうな話は何でも私の部門で見ますから、現場はどんどん相談を持ちかけてきてほしい。そのためには話が来たら、現場の人に対して「できない理由は言うな」と伝えてあります。しかも自分が依頼した立場だったら、レスポンスは早くもらいたいから、部下には「おおまかな方向性だけでもいいから、今日聞かれたことは明日までに答えろ」と言っています。