米Hewlett-Packard(HP)は、ユーザー企業の業務アプリケーションを近代化させるSI(コンサルティング、システム構築)サービスに注力している。主な施策は、メインフレームによるレガシーシステムを、オープン系のシステムに置き換える、というもの。レガシーシステムの運用にかかっていたコストを転用すれば、モバイル端末やWeb 2.0系クラウドといったコンシューマ技術を取り入れた新しい業務を実現できるという。米HPで同施策の担当ディレクタを務めるPaul A.Evans氏に、ユーザー企業の業務の変化について聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro



業務システム近代化の背景は?

米Hewlett-PackardでEnterprise Marketing部門のApplication Transformation担当Directorを務めるPaul A.Evans氏
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 今、すべてが変わろうとしている。レガシーシステムをオープン系システムに置き換える「Application Transformation(アプリケーションの変革)」は、企業や政府など、あらゆる組織に関係する共通の現象だ。

 ポイントは二つある。一つは、今あるアプリケーションの構成を見直し、要らないアプリケーションを減らすというもの。もう一つは、コンシューマ技術と業務システムをつなぐ新しい業務のやり方を始めるというものだ。

 コンシューマ技術の浸透は、エンターテインメント分野に限ったことではない。エンタープライズ分野(業務システム分野)においても、重要な要素になっている。企業は現在、ビジネスモデル(金の儲け方)の変化、労働人口の変化(若者が入社し、ベテランが引退する)、技術自体の変化と、三つの大きな変化にさらされており、こうした変化がコンシューマ技術を後押ししている。

 米HPがユーザー企業を対象に、「情報システムを使って本当にやりたいこと」を調査したところ、95%の企業が「イノベーション」を挙げた。業務部門やエンドユーザーには、業務をこうしたいというイメージや、希望していることが、すでに沢山ある。これらを、より速く、より安く、より良く提供しなければならない。このための原動力となるのが、コンシューマ技術なのだ。

HPは具体的に何を支援するのか?

 米HPの取り組みは、大きく三つの段階に分かれる。一つめは、要らないアプリケーションを整理する段階だ。二つめは、アプリケーションを作り替えて保守性を高める段階。三つめは、コンシューマ技術を取り入れて新しいアプリケーションを利用する段階だ。

 まず、第一段階として、アプリケーションの数を減らすことを考える。どのようなアプリケーションであれ、存在しているだけでコストがかかる。企業のCIO(最高情報責任者)に聞くと、企業には、必要としている量の2倍ものアプリケーションが存在しているのが実態。これを半分に減らすだけで、アプリケーションの保守費用が半分に減る。

 第二段階として、COBOLなどで書かれたレガシーアプリケーションを、現代風のアプリケーションに作り変える。こうしたレガシーアプリケーションのスキルは、今後は伸びていかず、現在スキルを持っているベテランも退職してしまう。現代風のアーキテクチャや言語に作り替えることで、保守性が下がって運用コストが減るとともに、開発の柔軟性が増す。

 第三段階として、エンドユーザーが欲する、今ある要求として、モバイル端末やWeb 2.0系クラウドなどのコンシューマ技術を取り入れる。今後は、スマートフォン/タブレットやパブリッククラウド・サービスを利用して業務を遂行するようになる。この際のセキュリティを確保するための製品サービスも、米HPでは用意する。

アプリケーション近代化の具体的な効果は?

 あるユーザー企業では、アプリケーション数を削減し、アプリケーションの作り替えを実施した。これにより、1万9000件(2000万ステップ)のCOBOLアプリケーションを、約半分にまで減らした。このためにかけた費用を回収するまでの期間は、わずか18カ月である。

 仮に、アプリケーションを作り替えることなく、アプリケーション数の整理とハードウエアのリプレース(COBOLアプリケーションをメインフレームからオープンに移行)だけであれば、平均して9カ月で投資額を回収できる。