「世界で売るレノボの力と日本市場を知り尽くしたNECの力を、製品開発に生かす」。NECとともに「NEC レノボ・ジャパン グループ」を形成する中国レノボ。合弁会社の会長を務める、レノボ・ジャパンのロードリック・ラピン社長は自信を見せる。タブレットなどのモバイル分野を重点的に強化する方針を示すとともに、NECの米沢事業場を加えた「世界四極体制」で研究・開発を展開すると述べた。

(聞き手は玉置 亮太=日経コンピュータ

レノボとNECの合弁によって、両社の製品戦略はどのように変わるのか。

レノボ・ジャパンのロードリック・ラピン社長
レノボ・ジャパンのロードリック・ラピン社長

 実は表面上は、それほど急激に変化をするわけではない。むしろ両社の製品戦略は、合弁以前と比べても一貫したものになる。両社の製品ブランドは変えないし、販売網についても従来の体制を維持する。

 むしろ今回の合弁は、バックエンドの業務プロセスに主眼を置いている。部品の調達プロセスやサプライチェーンを統合し、PCメーカーとしての地力を高める。

 バックエンドの統合によって、製品自体の競争力も強化できる。部品の調達や顧客サポートを効率化して、浮いたコストを研究・開発の原資に回せるからだ。両社が独自に開発してきた技術についても、可能な限り相互に融通する。

具体的には、どういった製品分野に注力するのか。

 モバイル機器やタブレット、デジタルホーム機器だ。PCを上回る成長を期待できる、最も有望な市場だ。今年4月には、これらの製品事業を担当する「MIDH事業部」を設立し、人材を集中させている。

 現在のNECは日本市場に特化しており、レノボは世界規模で事業を展開している。モバイルやタブレットの分野で、両社のノウハウを合わせて、日本市場に特化した製品を投入したい。

 もちろんPC事業への投資も怠るつもりはない。伝統的なPCは、足元では依然として市場の主流を占めているからだ。特に日本は、世界の中でもノートPCの普及率が高い国だ。そこでNECが日本国内に持つ開発・生産拠点である米沢事業場が重要な意味を持つ。

 レノボは米国、中国、そして日本の「大和研究所」という三つの研究・開発拠点を持っており、これを「イノベーショントライアングル」と呼んでいる。これにNECの米沢事業場が加わるわけだ。世界4カ所のどこかで、常に研究・開発活動を展開できる。

 既にレノボの研究・開発チームが米沢を訪れたり、逆にNECのチームが大和研究所を訪問するなど、技術者の相互交流を進めている。両社の知的財産も可能な限り共有して、互いの製品に生かしていく。

顧客サポートの内容や品質を、合弁でどう高めるのか。

 もちろん改善を図っていく。具体策の一つとして、レノボの一般消費者向けサポートを、NECのコールセンターに委託する。顧客サポートのサービスレベルは、各種の調査でNECが高い水準にあるからだ。企業向けのサポート体制は変更しないが、これについても今後は同様な連携を検討する。