日本IBMは2011年1月、顧客企業が求めるソリューションを用意するため、ソフトウエア部門にインダストリーソリューションズ事業部を新設した。業種特化型のソリューション開発を担当する専任部隊である。同事業部長に狙いと半年間の成果を聞いた。

(聞き手は矢口 竜太郎=日経コンピュータ


2011年1月にインダストリーソリューションズ事業部を新設した。

日本IBM ソフトウェア事業 インダストリーソリューションズ事業部 事業部長 田崎 慎氏
日本IBM ソフトウェア事業 インダストリーソリューションズ事業部 事業部長 田崎 慎氏
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 お客様に業種特化型のソリューションを提供するために作った組織だ。この役割の組織は従来のソフトウエア部門にはなかったものだ。

 これまで、ソフトウエア部門はソフト製品のカテゴリーや商品名でブランドを定義し、そのブランドごとに組織を作っていた。Webアプリケーション製品などの「WebSphere」、開発ソフトの「Rational」、データ管理の「Informaton Management」といったブランドが事業部の名称になっていた。

 インダストリーソリューションズ事業部は、ブランドごとの組織とは大きく役割が異なる。WebSphereやInformaton Managementなど個々の製品を組み合わせ、業種別のソリューションとして仕上げるのが当部門の役割だ。

 業種別のソリューションを作るために利用するのが「Industry Framework」である。Industry Frameworkの実体は、ミドルウエア製品の組み合わせ方のノウハウや標準的なプロセスモデル、再利用可能なソフト部品などからなる。このIndustry Frameworkを取り扱う専門家が、インダストリーソリューションズ事業部なのである。

 また、ここ数年に買収した企業の製品で、既存のブランドに収容しきれなかったソフトもインダストリーソリューションズ事業部が受け持つ。スターリングコマース、ユニカ、コアメトリクスなどが提供していたソフト製品である。

製品を組み合わせて顧客ごとのソリューションに仕上げるのは、サービス部門である「グローバル・ビジネス・サービス(GBS)」の役割ではなかったのか。

 確かに、これまではGBSの仕事だった。今後はインダストリーソリューションズ事業部とGBSとでチームを組んで、ソリューション開発を進めていく。役割分担は、当方がIndustry Frameworkの専門家、GBSがお客様の業務の専門家という立場である。

 製品を起点にソリューションを開発するのが、インダストリーソリューションズ事業部であり、業務の観点からソリューションを開発するのがGBSだ。両者の力を使うことで、業種別ソリューションを用意できる。

 業種別ではないが、先日発表した新ビジョン「スマーターコマース」(関連記事)も、インダストリーソリューションズ事業部とGBSが共同で推進する取り組みである。

ソフト部門に所属する者であっても、製品のことだけを考えていてはダメで、どうやって顧客の役に立つかまでを考えろということか。

 その通りだ。お客様が求めているのは製品ではなくソリューションである。ソフト部門だからといって、製品の特徴について説明しているだけでは不十分だ。製品をどのように活用することで、そのお客様にどのようなビジネス上の効果があるかを説明できなければならない。

 実は、Industry Frameworkは、元々GBSが開発していた。しかし、主管部署をソフト部門に変え、インダストリーソリューションズ事業部で受け持つことにした。Industry Frameworkの開発には、製品知識が必要になると判断したからだ。

新体制後の成果は出ているのか。事業目標は達成しているか。

 部門別の売上高は公表しない。当面の目標は、今回の枠組みを活用して効果を上げたお客様の事例を、より多く作ることだ。今年7月に予定している「IBM Smarter Commerce Forum」で、紹介できるはずだ。