レガシーなRDBには投資せず
少し足りないというソフトウエア事業では、さらなるM&A(合併・買収)を考えていますか。特にデータベース分野の強化は大きな課題だと思いますが。
ソフトウエアのポートフォリオに関しては、例えばクラウド環境を管理するための基本的な製品なら既に提供しています。さらにセキュリティ、およびコンプライアンス用のソフトウエアもポートフォリオとして持っています。
ご指摘のデータベースですが、既存のRDB(リレーショナルデータベース)ならパートナーシップに依存することもできます。レガシーなRDBは、HPとして必ずしも投資を必要としないと思います。一方で、大量のデータに対する分析用データベースについては、もっと投資していかないといけません。
そのためにヴァーティカを買収することにしたのです。彼らはスタートアップ企業ですが、この領域における最先端のテクノロジーを持ち合わせており、超高速でリアルタイム分析が可能なデータベ ースを持っていました。
我々は今後も、この領域で製品ポートフォリオを強化していきたいと考えています。ただ、M&Aのみに頼るわけではありません。我々自身も、独自でそういったものを作る能力を持ち合わせていますからね。
サービス事業についてはいかがですか。旧EDSの事業で十分なのか、もっと強化していく必要があるのか、どちらでしょうか。
サービス事業についても、決してこれで十分だとは言えません。常に進化し様々な能力を追加していかなければならないのですが、自前でそういった能力を実現することは可能だと思っています。ただ、時々そうでない手段(M&A)を採ることも考えますが。
中国やアジア市場の重要性が高まるなかで、日本市場の位置づけに変化はありますか。そう言えば、米国のIT企業のトップが来日する機会がめっきり減りましたが。
日本はこれからも重要な市場です。IT企業のトップが来日しなくなっているのであれば、それは誤った判断だと思いますよ。実際に私は昨年11月の就任以来、二度来日しています。もちろん成長の度合いを考えれば、日本市場は中国やインド、ブラジル市場とは違ったものになって当然です。しかし日本は依然として巨大な市場であることに変わりありません。
それに日本市場はこれまで、グローバルで見ると特殊な市場でしたから、今後はさらに大きなチャンスがあると考えます。日本企業はグローバル化すべく変革のときを迎えており、我々が支援できることはいくらでもあります。
IBMとHPの比較は意味がない
IBMに比べ日本での売り上げが伸びていないようですが、事業拡大に向けて具体策はありますか。
私はIBMとHPを比較するようなことはしません。IBMはIBMであり、HPはHPです。ビジネスモデルが一部違いますから。
どんな市場においても大きくなる最良の方法は、顧客が望む製品やサービス、ソリューションをより多く提供することです。ただ先ほどお話しした通り、外資系のIT企業にとって日本市場はまだ特殊な市場です。我々はそうした環境で事業展開していることに留意しなければなりません。
例えば日本でのサービス事業を伸ばすために、大手ITサービス会社を買収するといったことは考えられませんか。
我々はクラウドなどの形で、もっと付加価値サービスを日本に展開していきたいと考えている、とだけお答えしておきます。
日本のIT企業もグローバル化に向け海外でM&Aを積極化していますが、こうした動きはHPにとって脅威になりますか。
敬意を表さないわけではありませんが、脅威ではありません。ITサービス市場は巨大です。多くのプレーヤーが活躍する場があります。ただ、日本の友人に警告を発しておきたいと思います。買収するのは簡単ですが、その企業をマネジメントするのは簡単ではありませんよ。
レオ・アポテカー氏
(聞き手は、木村 岳史=日経コンピュータ)