世界最大のコンピュータメーカーとなった米ヒューレット・パッカード(HP)。企業向けからコンシューマー向けまで幅広い製品・サービスのラインアップを持つ同社は3月、そうした総合力を生かしてクラウド事業などを強化することを発表した。レオ・アポテカーCEO(最高経営責任者)に、その事業戦略や日本市場での取り組みについて聞いた。
CEOに就任してみてHPはどのような企業でしたか。また、それを踏まえ、CEOとして何を目指すのですか。
HPの強みはまず、製品やサービスのポートフォリオです。企業向けからコンシューマー向けまで、ハードウエアやソフトウエア、そしてサービスを持っています。IT業界のなかで、最も幅広いポートフォリオをカバーしていると言ってよいでしょう。その意味で、HPは非常にユニークな立場にあります。
二つめの強みは、その規模です。他社には真似のできない規模で自社の能力を展開しているわけです。三つめの強みとして、グローバルなプレゼンスが挙げられます。限られた分野ではなく、すべての事業において世界で大きなプレゼンスを持っています。
では、その強みを生かしてHPをさらに良い企業にするには、どうすればよいのか。私はその答えとして、多様なポートフォリオをより一貫性のある形で市場に展開することだと考えました。
ハイブリッドクラウドに注力
そうしたことを実現していくことで、HPをどのような企業にしたいとお考えですか。
HPとしては、IT業界の将来を形成するような存在になりたい。今、IT業界では三つのメガトレンドが進行しています。ITのコンシューマー化、クラウド、そしてコネクティビティー(接続性)の進展です。こうしたメガトレンドの動きのなかで、我々がIT業界の将来を創れると信じています。
ビジネスパーソンやコンシューマーを問わず、誰もが情報をいつでもどこでも自分の好みのデバイスを使って即座に入手したいと思っています。我々は、そのニーズに応えるため、今まで以上にクラウド基盤とコネクティビティーを活用できるようにしていきます。そのための取り組みの一つが、2月に発表したwebOSです。タブレット端末やスマートフォン用のOSとして展開していきます。
企業向けソリューションについては、ハイブリッドクラウドのアプローチを採ります。それにより、顧客企業が既存のITインフラを段階的に進化させるのを手伝うことができます。
さらに我々は、クラウドによって得られる大量のデータ、いわゆるビッグデータを情報に変換することを支援していきます。リアルタイム分析が可能なデータウエアハウス製品を販売する米ヴァーティカを買収することにしたのは、その一環です。
IT業界の将来を形成するというお話は、IBMやマイクロソフト、あるいはグーグルやアップルに取って代わってIT業界のリーダーになるという意思表明と受け取ってよろしいですか。
売り上げの物差しで測れば、HPは既に世界一大きなIT企業です。実際、PCをはじめほとんどの事業分野で1位か2位のシェアを占めています。我々がそういう立場を誇れていないのは、ソフトウエア事業のみです。
ですから、HPはITのメガトレンドのなかで多くのことを達成できるはずです。家電に足がかりを持っていなければコンシューマー市場を取ることはできませんが、我々はそのためのハードウエアを持っています。クラウドなどのITインフラ分野においても、規模を獲得できるだけのプレゼンスがあります。
モバイル領域もしかり。HPはwebOSを提供することができます。もちろん、我々がすべてを手掛けられるわけではありませんが、他社よりも多くの要素を持っていることが重要なのです。システム全体のアーキテクチャーを構築することについても、我々は顧客から信頼を得ています。
だからと言って我々としては、どこかの企業に取って代わることを目指しているわけではありません。それに、IT業界の将来を定義し形成するうえで、二番手や三番手の企業にも活躍する余地はまだ残されていると思いますよ。
レオ・アポテカー氏
(聞き手は、木村 岳史=日経コンピュータ)