IPトラフィックの急激な増加はサービスプロバイダーを悩まし続けてきた。しかしこれまでは、単にルーターや光伝送装置の容量を拡大し、それらの台数を増やすという対策しかなかった。こうした状況を打開するため、米ジュニパーネットワークスが提案したのが、コアネットワークの新アーキテクチャー「スーパーコア」と、それを実現する「PTXシリーズ」である。同社の担当者に話を聞いた。

(聞き手は高橋 健太郎=日経NETWORK


PTXシリーズのメッセージは何でしょうか。

米ジュニパーネットワークス インフラストラクチャ製品グループ プロダクト・マーケティング副社長 リュック・スーペンス氏
米ジュニパーネットワークス インフラストラクチャ製品グループ プロダクト・マーケティング副社長 リュック・スーペンス氏
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 この製品のキーとなるメッセージは、「スーパーコア」という概念です。サービスプロバイダーのコアを構成するトランスポート網のコストを低減することに主眼を置いて最適化した、新しいコアの概念です。

 大手のサービスプロバイダーが今抱えている課題は、IPトラフィックが急速に増えているということです。その課題をさらに大きなものとしているのは、トラフィックの予測不可能性です。例えば、モビリティによるトラフィックは、単に全体の量が伸びるだけではなく、利用パターンも多様にしています。クラウドコンピューティングも同じような影響を与えるでしょう。

 かつてユーザー端末はLANケーブルでスイッチと接続され、あまり動くことはありませんでした。コンピュータリソースも決められた場所に配置されていました。しかし、今は通信機器がネットワークの中を移動するようになり、ネットワークがそれに適応していく必要が高まっているのです。

 加えて収益の面で深刻な問題があります。ネット利用の取り引きの流れからサービスプロバイダーが外れてしまっている点です。一般ユーザーは、サービスプロバイダーのネットワークを介して、コンテンツプロバイダーのサービスを利用します。その際、コンテンツそのものの対価についてユーザーはコンテンツプロバイダーに支払います。一方、コンテンツによってトラフィックが増えても、ユーザーは余分に料金を払うことはないのです。

 よく知られている例が、インターネットのオンデマンド映像配信サービス「Netflix」でしょう。Netflixのトラフィックは、北米のトラフィックの3割を占めるようになりました。こうしたアプリケーションが生み出すトラフィックにより、サービスプロバイダーのコアネットワークは利益を生み出さないコストセンターとなってしまっています。そのようなネットワークは、とにかくコストを最小化することが急務となっています。

 以上がPTXを開発するのに至った背景です。