ウルシステムズは2011年3月31日、「Asakusa」をオープンソースソフトウエア(OSS)として公開した(関連記事:Hadoop向け基幹バッチ分散処理ソフト「Asakusa」の全貌)。同社はある顧客の基幹バッチシステムをAsakusaで構築している。Hadoopで基幹バッチ処理を行うにあたっての問題をどう解決したのか。なぜOSSとして公開したのか。ウルシステムズ 取締役 神林飛志氏に聞いた。

(聞き手は高橋信頼=ITpro編集


企業情報システムでのHadoopの市場をどう見ているか。

ウルシステムズ 取締役 神林飛志氏
ウルシステムズ 取締役 神林飛志氏

 ハードウエア、ソフトウエア、SIを含めれば1000億円は軽く超えると見ている。特に大きいのは基幹バッチ処理システムだ。BI(ビジネスインテリジェンス)の案件は1件3000万円から1億円くらいだが、基幹バッチ処理の案件は1件1億円以上。

 バッチ処理システムは“残ってしまっている”ものが多い。手をつけたくとも、わかる人がいなくなって保守できなくなりつつある。再構築したいというニーズは高い。実際に引き合いも来ている。

 Hadoopを使うことで、決算が日次でできてしまう。より正確な数字が得られるようになれば、経営者はより明確な打ち手を打てるようになる。

Hadoopを基幹バッチに適用するにあたっての課題は。

 まず、基幹バッチで使うための開発のフレームワークがないことだ。Hiveは少数のチームで開発する場合にはいいが、20~30人といった多人数でシステムを作るための仕組みは全くない。

 次に信頼性の問題。バックアップをどうするか。Hadoopだけでは運用でカバーする必要がある。

 また基幹バッチは、BIに比べて計算は単純だが、データの種類が多い。

 ジョブが失敗したときのリカバリの仕組みもHadoopにはない。HadoopのMapReduceは業務の単位ではないので、組み合わせて業務単位を作らなければならない。このようなロールバックの管理が最大のポイントだ。

 テストの手法も必要だ。Hadoopのアプリケーションはテストしにくい。

 これらの問題を解決するために作成したフレームワークが「Asakusa」だ。

なぜ、このようなノウハウのかたまりをOSSとして公開するのか。

 いろんな人に使ってもらい、フィードバックを得たいからだ。

 Hadoopの文化はOSSだ。成果はコミュニティに還元して、多くの方に開発に参加していだだきたい。

 OSSにすることで、ユーザーが導入しやすくなるということもある。特定の会社の製品となると、導入のハードルは極端に上がる。

 クラウドの時代になり、ノードあたりいくらというライセンス料のあり方は破綻すると考えている。だからOSSとして公開し、まずユーザーに使ってもらい、ウルシステムズとしてはその上でサービスを提供し、フィーをいただくことでビジネスにする。規模を追うのではなく、トラブルシューティングやチューニングといった付加価値の高いサービスを提供し、質の高いビジネスを追求していく。