米セールスフォース・ドットコムが2010年12月に買収したRubyのPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)「Heroku」。バイロン・セバスティアン氏はHerokuの運営会社でCEO(最高経営責任者)を務めていた人物で、現在はセールスフォースのプラットフォーム部門を担当するシニア・バイス・プレジデントだ。セバスティアン氏にHerokuの今後を聞いた。

(聞き手は中田 敦=日経コンピュータ



以前インタビューをした米ヘロク(Heroku運営会社)のジェームス・リンデンバウム氏(前CEO)から、サービス名のHeroku(ヘロク)は、「Hero(ヒーロー)」と「Hike(俳句)」の合成語だと聞いたことがあります。

米セールスフォース・ドットコム プラットフォーム部門シニア・バイス・プレジデント バイロン・セバスティアン氏
米セールスフォース・ドットコム プラットフォーム部門シニア・バイス・プレジデント バイロン・セバスティアン氏

 そうだ。Herokuのミッションは、Rubyを使う開発者を「ヒーロー」にすることだ。

 開発者は偉大なアイデアを思いついたら、それをRubyのプログラムにして、Herokuのプラットフォーム上に展開すればいい。そうすればそのアイデアは、すぐに実現可能になり、開発者はヒーローになれる。

 従来、アイデアをWebアプリケーションという形にするためには、サーバーを購入したり、設定したり、管理したりする必要があった。HerokuのようなPaaSを使えば、これらの労力は一切不要になる。

PaaSとしてのHerokuの強みは、どこにありますか?

 Herokuを使う開発者は、三つのことに驚くだろう。

 一つ目は、Herokuが実現する「スピード」だ。RubyのプログラムをHeroku上に展開すると、展開したプログラムはすぐに利用可能になる。ほんの一瞬だ。多くの開発者にとっては、信じられないような経験になることだろう。

 二つ目は、Herokuが豊富な機能を備えていることだ。Herokuは、Web/アプリケーションサーバーとして機能する「Dynos」と、バックグラウンドプロググラムをホストする「Workers」という二つのサーバー機能に加えて、「PostgreSQL」をサービスとして利用できる「Dedicated Databases」という機能がある。

 さらに豊富なアドオン機能もある。いわゆる「NoSQL」と総称される新種のデータベース(DB)も複数アドオンとして備えており、インメモリーDBである「Memcache」や、キー・バリュー型データストアの「Redis」、ドキュメント指向DBの「MongoDB」や「CouchDB」などを、開発者はサービスとして利用できる。

 多くの開発者が今、「アプリケーションは猛烈な勢いで進化しているのに、DBだけ10年前と同じものを使い続けていていいのだろうか」と疑問に思い始めている。「新しいアプリケーションには、新しいDBが相応しい」と考えたアーリーアダプター達が、NoSQLに興味を示し始めている。

 我々の調査では、Herokuを利用する開発者の半数が、「NoSQL機能が重要だ」と答えている。こういった最新技術が、Herokuならサービスとしてすぐに利用可能で、しかも商用サポートを受けることもできる。

 三つ目は、Herokuのスケーラビリティ(拡張性)だ。HerokuのアプリケーションサーバーであるDynosは、GUI(グラフィカル・ユーザー・インタフェース)ツールから操作するだけで、処理能力を拡大したり縮小したりできる。

 Herokuにホストしたアプリケーションに、何百万というユーザーが押し寄せても、容易にスケールアップできたという実績もある。

セールスフォースの他のプラットフォームとHerokuとの関係はどのようなものになりますか?

 Heroku上のアプリケーションから、セールスフォースの新しいDBサービス「Database.com」が利用可能になる。Database.comは、「Salesforce CRM」や「Force.com」での運用実績がある、安全で信頼性の高いDBサービスだ。

 またForce.comのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)が既に、Heroku上のアプリケーションから利用可能になっている。