SAPジャパン、i2テクノロジーズジャパン、パワードコムといったIT企業/通信事業者の代表取締役社長兼CEOを務めた中根 滋氏が、シャープの子会社であるiDeepソリューションズの社長に就任。企業向けの会議支援システム「TeleOffice」を提供する(関連記事)。中根氏に社長就任の経緯や、iDeepソリューションズの今後の展開などを聞いた。(聞き手は大谷 晃司=ITpro)

iDeepソリューションズ 代表取締役社長兼CEO 中根 滋氏
iDeepソリューションズ 代表取締役社長兼CEO 中根 滋氏

iDeepソリューションズの社長に就任した経緯は。

 シャープ堺コンビナートのサプライチェーンのアドバイザーをやっていた際、別案件として上がってきたプロジェクトがiDeepソリューションに発展した。シャープの2009年度の売上をみると、研究所から生まれるデバイスなどの“川上”は1兆円、そのデバイスを使ったテレビやソーラー発電などの“川中”は2兆円規模。だがシャープは“川下”にあたるソリューション、ITと三つ巴になって取り組むようなBtoBの法人向けソリューションに弱い。

 シャープは2012年に創業100周年を迎える。町田会長(代表取締役会長の町田 勝彦氏)から、「なんでうちの会社はソリューションが足りないんだろうな、法人ビジネスがうまくないんだろうな」という話があり、そこから立ち上がったプロジェクトをまかせてもらった。そのプロジェクトが2010年9月にiDeepソリューションズになり、社長をやらせてもらっている。

会議議支援システムは既に多くのベンダーが提供している。

 われわれは当初からモバイルを意識し、iPadやiPhoneなどから使うことを想定している。iPhone/iPadでおなじみの、美しくてわかりやすく、さわると気持ちいいくらいのアプリケーションを作り、それをクラウドに乗せるという前提だ。使い方はキーボードとマウスに加え、タッチ操作やペン入力を当初から考えてきた。

 そもそも「TeleOffice」(テレオフィス)を開発した背景の一つに、現場に喜んでもらいたいという気持ちがあった。私はIBMに始まり、SAP、PwC(プライスウォーターハウスクーパース)、I2テクノロジーなどで仕事をしてきたが、私の提案はいつも経営者には喜んでもらえた。ERPはその典型だ。ただその一方で、現場からは「あなたのおかげで自分がデータをいれなければならなくなった」といった否定的な意見が出たこともある。そういった経験があったため、今度は現場から「中根よくやったな」という声を聞きたいという思いもあった。

 もう一つは、日本発の、世界で使われるソフトウエアを出したいという気持ちがあった。日本人にはソフトウエアの才能がないといわれることもある。「半分はそうだな」と思うこともあるが、「半分はうるさいな、そのうち出すよ」と思っていた。「日本発世界へ」という点でも町田会長と意見があった。今はシャープの日本の全拠点、海外ではポーランド、上海、香港、米国はニュージャージーをはじめとする拠点に導入され、さらに増える予定だ。

TeleOfficeの開発体制は。

 TeleOfficeは「Made in Japan」だが、「Made by Japanese」ではない。iDeepソリューションズには社員が約100人いるが、そのうち半分が外国人。開発のリーダーはアメリカ人だ。その下にオランダやスイス、中国、インド、フィリピンといった国の人たちがいっしょにやってくれている。もちろん日本人もいる。もともとインターナショナルチームでTeleOfficeは開発している。

 TeleOfficeのグランドデザインは私がやっている。それをテクノロジーに翻訳する仕事をアメリカ人のリーダーがやり、それをみんなで分散してリッチ・インターネット・アプリケーション(RIA)として仕上げてきた。

 いいソリューションの影には必ずいいアイデア、苦言をくれたお客さんがいる。われわれの場合はそれがシャープだった。幸い同じ資本の中だったのでできたといえる。

 TeleOfficeは、ソフトウエアだけでなく、ハードウエアも提供するが、われわれが提供するハードウエアだけで動作するわけではない。iPhoneやiPadしかりで、TeleOfficeはまったくオープンな発想で作られている。シャープの競合企業の製品でもスペックさえ合えば動作する。

 TeleOfficeは米マイクロソフトの.NET Frameworkで開発している。RIA用のプラットフォームであるSilverlightを使っている。現在、コンテンツを作るデバイスである“コンテンツクリエイションデバイス”は普通パソコンだ。OSはWindowsが主流だ。一方、コンテンツを見る、消費するデバイスである“コンテンツコンサンプションデバイス”は、典型的なのはiPhone、iPad。そのほか欧州ではSymbian、米国はBlackBerryも多い。今後はこれにAndroid搭載機が加わる。コンテンツクリエイションデバイス、コンテンツコンサンプションデバイスの両方への対応を進める。