楽天は、iアプリ版ドコモマーケットの開始にあわせて「楽天トラベル」「楽天ブックス」「楽天GORA」「楽天オークション」という4アプリをリリースした。楽天が既に展開するサービスを利用するためのアプリという位置付けで、料金はすべて無料。iアプリのメリットやマーケットでの位置付けについて、企画・制作を担当した石川智哉氏と皆川博信氏に話を聞いた。

(聞き手は小越建典=アバンギャルド)


今回iアプリ版を提供する4サービスは、既にiモードの公式サイトとして運営されています。iアプリとモバイルサイトの違いは。

写真●iアプリ版ドコモマーケット対応の4アプリを企画・制作した楽天 編成部の皆川博信氏(左)と石川智哉氏(右)
写真●iアプリ版ドコモマーケット対応の4アプリを企画・制作した楽天 編成部の皆川博信氏(左)と石川智哉氏(右)

皆川氏:上下左右のキーで直感的に操作できるユーザーインタフェース(UI)が、4アプリに共通したコンセプトです。例えば「楽天ブックス」なら、上下キーでスクロールし、右キーで詳細ページに移動します。

 モバイルサイトで大量の情報へアクセスするには、何度もリンクをクリックし、その都度通信してページを移動しなければなりません。画面の広いパソコンと違い、1ページに入れられるデータの量が限られているからです。また、通信によって動作が重くなると、ユーザーにはストレスがかかります。サービスを予約したり、商品を購入したりするうえでの、ボトルネックになると考えていました。

「次々にスクロールしたくなるサクサク感」を目指した

皆川氏:iアプリではページを遷移しなくても、縦にスクロールするだけで次々と情報を閲覧できます。通信が発生することに変わりはありませんが、バックグラウンドでデータを取得ができるのが大きなメリットです。

 アプリを起動すると、1ページで表示するデータの一部を取得します。これらを表示しながら、その下のリストや別ページへユーザーがたどり着く前に、裏側で次々とデータをダウンロードしています。同じサービスのモバイルサイトと比べ、動作は非常に軽快だと感じていただけるはずです。

 「楽天ブックス」では商品、「楽天トラベル」なら旅行・宿泊プランの情報を、初めに10件前後ダウンロードするのですが、この件数が多すぎると起動が遅くなり、少なすぎるとスムーズにスクロールできなくなります。最適な通信のタイミングと、取得するデータの量を調整するのが「職人技」と言えるでしょう。

デメリットや課題は。

皆川氏:例えば、楽天トラベルや楽天GORAは、最終的にブラウザで予約します。アプリだけで一気に予約完了まで行ければ良いのですが、予約ページから再度検討し直す場合、アプリに戻らずに離脱してしまうかもしれません。この「アプリ」→「ブラウザ」→「アプリ」の導線には大変憂慮しており、予約手続きをいかにアプリ内に取り込んでいけるかが今後の大きな改善点になるでしょう。

石川氏:私たちのビジネスモデルでは、ユーザーに購入・成約していただくことで、成果を得ることができます。使いやすいUIとともに、すべてのステップをできるだけアプリの中で完結するのは、とても大事な要素です。その点、「楽天ブックス」は書籍の購入までの作業を、ブラウザを使うことなくアプリで実行できます。

皆川氏:このほか、iアプリを開発するうえでは、機種依存を調整するのに苦労しました。端末Aでの動作性能を向上すると端末Bでは固まる、といった問題がしばしば起こるのです。iPhoneアプリの場合、端末は1種類ですから、このような苦労はありません。

ドコモマーケットのプロモーションに期待

マーケティングの面では、iアプリ版ドコモマーケットに何を期待しますか。

石川氏:以前からiアプリはありましたが、ゲームなどエンタメ系のコンテンツが主体で、ユーザーも限定的だったと考えています。一方、現在シェアを広げるスマートフォンでは、ユーティリティ系のコンテンツも含め、アプリの文化が浸透し始めています。

 今回、iアプリ版ドコモマーケットが始まったことで、ケータイの世界でアプリの意義を、再提案するチャンスができたと思っています。ゲームだけでなく、快適に商品を購入し、サービスを予約するためにも、とても優れたツールであるという「気付き」を、市場に与えたいのです。

 そのためには、ドコモマーケットが多くの人に利用され、iモードユーザーにアプリが根付く必要があります。NTTドコモが参入のハードルを下げ、アプリのマーケットが活発化する方向に進んでくれたことは、とても良かったと思っています。

皆川氏:これまで、「モバイルで予約(買い物)なんて」と思っていた人には、楽天のiアプリをぜひ一度触ってもらいたいですね。存在自体を知らなければ意味がありませんが、iメニューからアクセスできるドコモマーケットなら、単純にiアプリの認知度は上げられます。また、新しい仕掛けですから、NTTドコモのプロモーションには大きな期待を持っています。我々もそこに賭けようという意識があり、楽天としても初期のうちにアプリをリリースするのが必須だと考えていました。 

石川氏:ユーザビリティが向上したことで、モバイルで楽天のサービスを利用するシーンは広がります。パソコンを立ち上げなくても快適に使えるわけですし、外出時でも旅行やゴルフ場の予約、買い物やオークションへの参加ができるわけです。

 ここ数年、楽天でもモバイル利用のシェアが高まっており、iアプリのリリースで、確実にその傾向は加速するはずです。とはいえ、パソコンからモバイルへ、使い方がシフトするわけではなく、全体のパイが増えると見込んでいます。iアプリがサービスの利便性を高めたことで、新たなニーズが生まれると期待しています。