マイクロソフトのクラウドの土台を成すデータセンターは、どのような技術戦略の下に運用されているのか。チーフアーキテクトを務めるディリープ・バンダーカーは、「2011年初めには、第四世代と呼ぶ最新技術を、米国3カ所で運用を始める」と明かす。冷却には外気を積極利用し、電力効率の限界を目指す。

(聞き手は玉置 亮太=日経コンピュータ



米マイクロソフト チーフアーキテクト グローバル・ファウンデーション・サービス担当 ディリープ・バンダーカー氏
米マイクロソフト
チーフアーキテクト
グローバル・ファウンデーション・サービス担当
ディリープ・バンダーカー氏

データセンター設計において、最も重要なポイントは何だと考えるか?

 包括的な最適化(Holistic Optimization)を図ることだ。データセンター設備だけを改善しても、あるいは内部に設置するサーバー機器だけを高性能かつ省電力にしても、最適なデータセンター設計はできない。両者を一体のものとして設計する包括的なアプローチを採ることで、データセンター全体の電力利用効率をギリギリまで高めることができる。

 マイクロソフトは現在、サーバー機器やそれを格納するラック、そしてコンテナ型のデータセンター設備まで、自前で設計している。例えばサーバー機のコンセプトデザインとしては、プロセッサーは2個(ソケット)、メモリースロットは計8基、PCIスロットは1基を搭載して、サーバー機の幅は通常の半分だ(写真)。

コンテナ型のデータセンターとしては、現在どのようなものを開発しているのか?

サーバー機のコンセプトデザイン<br>プロセッサーは2個(ソケット)、メモリースロットは計8基、PCIスロットは1基を搭載する。
サーバー機のコンセプトデザイン
プロセッサーは2個(ソケット)、メモリースロットは計8基、PCIスロットは1基を搭載する。
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 コンテナ型データセンターについては、2009年に発表した「IT PAC」の改良を進めている。当初はISO標準に準拠したコンテナを使っていた。つまりタンカーなどの船に荷物を積み込むコンテナと、同じものだったわけだ。

 最新のものはISO標準ではなく、マイクロソフトが独自に設計した。IT PACは船に積んで米国から日本へ輸出する、といったものではなく、トラックでデータセンター建設地まで運んで設置することを想定しているからだ。

 冷却方式も改良した。第一世代のIT PACはサーバー機器の冷却に水を使っていたが、現在の世代は外気を使った空冷方式だ。加えて、蒸発冷却(Evaporative Cooling)という手法も使う。これは気化熱を使った冷却方式で、外気温が華氏90度~105度(摂氏32度~35度)の地域で有効な手段だ。

 IT PACには、サーバーを最大90台搭載したラックを、20基搭載できる。稼働させるサービスの種類によって変化するが、最大で1800台のサーバーを一基のコンテナに搭載できる計算だ。

 ただし実装段階では、IT PAC自体の大きさや搭載するサーバーの仕様は様々なものになるだろう。サードパーティの製造業者や実行するサービスの種類によって、実際の大きさは異なる。ハードウエアの供給業者や稼働するアプリケーションの種類に応じて、IT PACは最適化される。このようにマイクロソフトは、個々の機器からデータセンター全体に至る、包括的な最適化を志向している。