朝日新聞の「Catchew!(キャッチュー)」は、朝日新聞社のニュースコンテンツを配信するiアプリ。2010年12月6日のiモード版ドコモマーケットのスタートと同時に、月額315円でリリースされる予定だ。同アプリの企画の立案から開発までに携わる渡辺氏は、社外の開発ベンダーと調整を重ね、満足できるアプリを完成させたと語る。開発コンセプトは「高速で起動し、閲覧できるニュースリーダー」だ。

(聞き手は小越建典=アバンギャルド)


「Catchew!」をiアプリとして企画したきっかけは。

 iモード版ドコモマーケットで、アプリ単体への課金ができるようになったことが、参入を決めた大きなポイントです。月額課金も可能ですから、アプリ販売のビジネスモデルが成立すると判断しました。ドコモマーケット開始と同時に提供できるよう、9月から開発を始めて1~2カ月で完成させました。

Webとは異なるサービスを提供する

「Catchew!」の内容を決定する上のポイントは。

渡辺敏行氏
渡辺敏行氏

 「Catchew!」の基本的な役割は、あくまでニュースリーダーです。とはいえ、コンテンツを配信する公式ニュースサイト「朝日・日刊スポーツ」は既にあるわけですから、アプリならではのメリットがなくては意味がありません。そのため、私たちは「高速」というキーワードにこだわり、アプリのコンセプトにもつながっています。

 「Catchew!」は起動時に約60本の記事を一括取得します。一度ダウンロードしてしまえば通信の必要がありませんから、複数の記事を一瞬で切り替えて読むことができます。iアプリはスクラッチパッドを利用でき、ある程度大容量の通信に耐えられるからこそ、実現できたことです。

 「Catchew!」は動作が速い上、地下鉄の中などオフラインの環境でも閲覧できますから、ニュースをまとめ読みするのには向いています。

 反対に、プロ野球の一球速報など、頻繁に更新される情報を追いかけるときは、Webサイトがとても便利です。

データの一括取得と高速起動の両立に配慮

朝日新聞社のニュース配信iアプリ「Catchew!」
朝日新聞社のニュース配信iアプリ「Catchew!」

 「Catchew!」では通常、写真と文字でニュースを配信しますが、起動時に写真表示の有無を設定できます。テキストのみダウンロードすればデータ容量が小さくなりますから、起動が速くなるのです。

 気になるキーワードを3つまで設定できる仕様になっています。キーワードに該当する記事は自動的に仕分けられるので、全文を読まなくても関係のあるニュースをピックアップできるのです。

新しい取り組みですが、開発段階で苦労したことは。

 「素早い起動」と「記事の一括取得」という二律背反する要素を両立させるのが、とても大変でした。たくさんの記事をストレスなく読んでもらうため、初めに全部の記事を一括取得しているわけですが、必然的に起動時間は長くなります。

 この問題を解決するため、例えば記事のフォーマットには、通常のRSSと同様のXMLを使用せず、専用のCSVを設計・配信しています。XMLパーサーを経由しない分、表示の速度が速くなるのです。元データを配信する媒体社のメリットが生かせていると思います。

一人でも多くの人にニュースを届けたい

ニュースを届けるメディアにとってドコモマーケットの利点は。

 私たちは、取材して作ったコンテンツを、できるだけたくさんの方法で、一人でも多くの人に発信したいと思っています。日本の携帯電話でトップシェアを持つNTTドコモの市場は大変魅力的です。

 しかも、今回のiアプリ版ドコモマーケットは、iメニューの上位に表示されます。検索する際はファーストビューに入るはずですから、ユーザーへの訴求力は強いでしょう。

 また、iアプリの登録やテストといったフローを行っていても、とても使いやすいプラットフォームであると感じています。

 特に魅力的なのは課金のAPIです。ドコモマーケットでは同社のサーバーが、アプリ本体の配信から、ユーザー情報の管理までを担ってくれます。おかげで、開発コストをアプリ本体の開発に集中することができました。

 今後は、アプリが配信され、コメントとしてユーザーからの評価が集まれば、「Catchew!」の課題も明確に見えてくるはずです。機能の改善や追加など、ユーザーの要望に応じてバージョンアップしていきたいと思っています。

■変更履歴
朝日新聞社のニュース配信iアプリ「Catchew!」の画面写真を追加しました。 [2010/12/02 13:26]