GoogleAppsもワークスタイルを変えるツールか。
そうだ。3年ほど前に導入したきっかけは、個人で使ってみて、こんなに便利なものを、なぜ会社で使えないのかと考えたことだった。ただ、使っているうちに、ワークスタイル変革につなげられると実感するようになった。
GoogleAppsでは、Gmail、カレンダー、ドキュメントなどの機能がシームレスにつながる。例えば、誰かがあるメンバーの掲示板に書き込みをしたときには、それが自動的にメンバーにメールで通知される。メンバーはいちいちサイトにアクセスすることなく、メールで内容をチェックできる。
利便性が高いアプリケーションを使うことが当たり前になり、それがコミュニケーションの共通言語になれば、組織的なコミュニケーション力が高まっていく。素早いコミュニケーションが習慣化されると、ワークスタイルが変わり、時間に余裕が生まれる。その分、顧客のケアを手厚くしたり、顧客との接し方の新しい方法を試したり、といった取り組みが可能になる。顧客とのコミュニケーション手段も変わってくる。
こうして、最終的に新しい付加価値を生み出せる可能性が広がる。例えばソーシャルメディアを使った情報提供とか、地域ごとの独特な顧客サポートという具合だ。そのための動きを、ICTを駆使してもっと加速させたい。
中古車のネット販売システム「ドルフィネット」にもクラウドサービスを採用する方針だと聞いている。
ドルフィネットは、できれば年内に再構築に着手する計画だ。この再構築に伴って、可能な範囲でシステムを外に出していこうと考えている。
ちょうど今、どの事業者、サービスを使うべきかを考えているところだ。現行のドルフィネットは、WindowsとSQL Serverというマイクロソフト製品を使っている。その観点で相性が良さそうなのはWindows Azureだが、まだ選択肢の一つに過ぎない。データの持ち方などを含めて、どのような仕組みがいいのかを考えている。
ただドルフィネットは、当社にとってまさに基幹となるシステム。さすがに「いいと思うからやってみる」と安直に進めるわけにはいかない。クラウド利用についてはスモールスタートになる。
長い目で見れば、クラウドを駆使してフットワークが軽いシステムにするほうがいいのかもしれないが、それにこだわるあまり、かえって時間やコストがかかってしまっては意味がない。それよりは、適用しやすい範囲で新たなデバイスやクラウドを使って、少しでも早くワークスタイル変革を進めるほうが重要だ。
クラウドサービスを導入するときのポイントは何だと考えているか。
システムの応答性能だろう。例えばiPadに関しても、顧客対応のシーンを考えると、第3.5世代携帯電話(3.5G)では性能的に厳しいことがある。顧客の前で、画面を開くのに何秒も待つような性能は致命的。だから、専用アプリを作って必要なときにだけ情報を取ってくるようにしたい。
これは社内のコミュニケーションでも同じだ。メール検索に30秒かかるとか、そんな状態ではダメ。だから、ネットワークの視点で、きちんと性能を突き詰めて考えていく必要がある。信頼性とかセキュリティという話も付いてくるが、まずは応答性能が重要だ。
光の道や無線の周波数再編といった話があり、ブロードバンド環境はますます進歩し、広がるだろう。もっと高速な無線技術も出てくるはずだ。そのときに、そのインフラを使いこなせるナレッジや、企業としてのシステムインフラを持っていたい。
執行役員 開発ディビジョン
許 哲(Ho Chol)氏
(聞き手は,河井 保博=日経コミュニケーション編集長,取材日:2010年9月10日)