リクルートは、2006年6月にWeb APIを初めて公開。2007年8月には「エイビーロード」「ホットペッパー」など、リクルートが発行する各種メディアのデータベースを外部から利用するためのWeb APIを一括提供する「リクルートWEBサービス」を開始した。

 情報を商材とするリクルートにおいて、APIの公開は商材をオープンにすることを意味する。当初、社内の抵抗は極めて強かったが、現在では、集客の向上、システム開発コストの削減、業務の効率化などの効果があがっているという。

 リクルートWEBサービスを提供するリクルート メディアテクノロジーラボの担当者に、API公開の経緯や効果について聞いた。

(聞き手は佐藤有美=フリーライター)
今回のオープンWeb推進企業
●企業名:リクルート メディアテクノロジーラボ
●Web APIを公開しているサイト:リクルート WEBサービス
●Web APIで提供している機能:web R25、eruca.[エルーカ]、リクルート進学ネット、エイビーロード、エイビーロード航空券、ホットペッパー、ホットペッパーBeauty、カーセンサーnet、タウンマーケット、スマッチ、赤すぐnet、赤すぐ内祝い、eyeco[アイコ]、アイケント、キーマンズネット
●Web APIの提供形式:REST
●Web APIのレスポンス形式:XML、JSON、JSONP(※各APIにはcrossdomain.xmlを設置)
●Web APIの公開 開始時期:2006年6月

リクルートがWeb APIの公開に踏み切ったきっかけは何ですか?

写真1●リクルート メディアテクノロジーラボ チーフエンジニアの舩見 高貴生氏
写真1●リクルート メディアテクノロジーラボ チーフエンジニアの舩見 高貴生氏
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船見:リクルート メディアテクノロジーラボ(以下、MTL)がWebサービスの提供を始めたのは、「Web 2.0」や「CGM(Consumer Generated Media)」といった言葉が日本で話題になっていたころでした。私たちは、ユーザー自身がWeb上のコンテンツを作成するCGMが発展していくと「ポータル」という概念が崩壊し、リクルートのメディアを介さずに、ユーザーと情報が直接つながる機会が増えると予想しました。

 従来は、ユーザーにリクルートというポータルに来てもらう姿勢でした。しかし、ユーザー側のメディアが発達して情報に直接アクセスする場が増えるのであれば、そこに対して情報を発信できる窓口を確保した方がよいのではないかと考えました。その手法として、Web APIの公開に踏み切りました。

社内での反発はなかったのでしょうか?

船見:リクルートは、情報出版サービス業です。公開する“情報”は、リクルートの商材に当たります。当初は、「何故、私たちの大切な情報を外部にさらさないといけないのか?」「リクルートのポータルサイトに来ないと情報が見られないというのがメディアの価値じゃないのか?」などと、社内の抵抗感は非常に大きかったです。

 こうした反発に対して私たちは、先にサービスを開発して既成事実を作ってしまうことで突破しようとしました。2カ月から1年かかってしまうような従来のシステム開発では、社内の稟議の段階からなかなか先に進めません。私たちは、自分たちの采配の範囲内で、1週間程度で完成するAPIからリリースし始めました。もし問題が起きた場合はいつでも閉じるつもりでしたが、既に出来てしまったものは意外と受け入れられてしまうようです。