中国大手のシステム開発会社である東軟集団(Neusoft)。2015年には技術者を2万5000人に増やす計画だ。東軟の創業者であり、現在も経営の舵取り役を担う会長兼CEO(最高経営責任者)の劉 積仁氏は「中国のITサービス市場は年率20%超の伸びを続ける」と断言。中国国内向けと日本向けオフショア開発の両輪で売り上げ拡大を図ると語る。

(聞き手は山端 宏実=日経コンピュータ

東軟集団(Neusoft)会長兼CEOの劉 積仁氏
東軟集団(Neusoft)会長兼CEOの劉 積仁氏

中国におけるシステム開発や運用・保守を含むITサービス市場の現状や、今後の見通しをどう見ているか。

 2009年の中国におけるITサービスの市場規模は1200億元(約1兆4400億円)だった。現在は成長の初期段階で、今後加速度的に成長していく素地がある。個人的には、年率20%超の伸びを続けるとみている。

 高成長をけん引するのが、政府と中堅・中小企業だ。政府は、スマートシティ計画などに関連し、システム構築の発注を増やしている。中堅・中小企業も情報化に資金を投じ始めた。

 需要の拡大に合わせて、体制を強化する。2015年をメドに、技術者を現状の1万8000人超から約7000人増やし、2万5000人にする計画を立てている。

ITサービス分野で日本最大手のNTTデータ本体の技術者数は約1万人。その2.5倍の技術者を東軟は持つことになる。

 その通りだ。技術者を増やし、中国のITベンダーと米IBMなど外資系のITベンダーが激しいシェア争いを繰り広げるITサービス市場で、売り上げトップを勝ち取りたいと考えている。

2015年に日本向けオフショア比率を50%に

東軟の強みである日本向けオフショア開発の現状、そして今後の見通しは。

 当社の売り上げに占める日本向けオフショア開発の比率は、2009年で30%に達した。中国国内向けが伸びているとはいえ、今後も日本向けオフショア開発が当社の中核事業であることは変わりはない。

 中国国内向けと日本向けオフショア開発を二者択一で考えるのではなく、中国国内向けと日本向けオフショア開発の両輪で稼ぐというのが当社の基本方針だ。2015年には、売り上げに占める日本向けオフショアの比率を50%に高めたいと考えている。

 加えて、2008年のリーマンショック以降、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)に対する需要が急速に伸びている。BPOの売り上げは年率30%のペースで伸びていたが、2009年は年率40%成長を達成した。今後3年は、年率40%成長が続くとみている。

中堅・中小企業が情報化に資金を投じ始めたということだが、東軟としてどうアプローチしていくつもりか。

 中堅・中小企業は情報化に目を向け始めたとはいえ、まだ十分な資金を投じられる状況にはない。初期投資を抑えつつ、安価に情報システムを利用できるSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)が有効な手段になると考えている。

 すでに取り組みも始めている。第一弾が、NECと協業し、この10月から始めたSaaS事業だ(関連記事)。当社が保有する大連のデータセンターを基盤に、企業ポータルや物流支援システムなど13種類のアプリケーションをSaaS形態で提供する。

 アプリケーションのメニューは順次増やしていく計画だ。NECに限らず、今後も他社との協業を探りつつ、SaaSを軸に中堅・中小企業向けビジネスを開拓していく。

 SaaSに関連していえば、2010年内をメドに、六つの地方政府と組み、地域住民の健康管理機能を備えたアプリケーションをSaaSとして提供する。日本であれば近くに掛かり付けの病院があり、すぐに医療サービスを受けられるが、中国ではそうはいかない。近くの病院まで自動車で数時間という地域もある。SaaSであれば、こうした地域にも良質な医療サービスを届けられる。