EMCジャパンは7月、RSAセキュリティ 代表取締役社長の山野修氏をEMCジャパン執行役員副社長兼任とする人事を発表した。山野氏は1999年にRSAセキュリティ社長に就任。2006年のEMCによる買収を経て、今日まで同社の経営の舵取りをしてきた。EMCジャパンでは、営業とマーケティングを統括する副社長として、パートナーセールスの強化を図る。今回の異例な人事の背景、EMCジャパンのパートナー戦略などについて、山野氏に話を聞いた。

(聞き手は羽野 三千世=ITpro


RSAセキュリティ社長とEMCジャパン副社長を兼任するに至った経緯を教えてほしい。

RSAセキュリティ 代表取締役社長 兼 EMCジャパン執行役員副社長の山野修氏
RSAセキュリティ 代表取締役社長 兼 EMCジャパン執行役員副社長の山野修氏
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 これは、顧客へのメッセージだ。EMCは、企業のITインフラの最適解として、プライベートクラウドを提唱している。「プライベートクラウドへの“旅”を支援する」というのが我々の経営スローガンだ。

 プライベートクラウドへの移行に際して、顧客が最も懸念するのがセキュリティだ。特に、日本企業の経営者は心配性の人が多い。今回の兼任人事の狙いは、(RSAセキュリティという)セキュリティベンダーのトップが役員となることで、プライベートクラウドにおける顧客のセキュリティ面の不安を払拭することにある。

 もう1つ、EMCジャパンのパートナー営業を強化したいという背景もある。RSAセキュリティの製品は、一部をOEM提供し、そのほかは全てパートナー経由で販売している。私は、RSAセキュリティのトップとして10年以上パートナーセールスにかかわってきた。その経験を、EMCジャパンのパートナー営業強化に生かしていく。

EMCジャパンでパートナーセールスを強化する背景は何か。

 EMCジャパンと言えば「大容量ストレージの直販」というイメージがある。しかし、実は何億円かするハイエンドストレージだけでなく、数万円のローエンドやミドルレンジのストレージも取りそろえている。

 中小企業や個人でもビジネスで扱うデータ量は年々増加しており、小規模オフィスに設置するようなストレージの需要は高まっている。このようなローエンド/ミドルレンジ製品の拡販とマーケティングには、パートナーの力が必要だ。

2006年にEMC傘下に入って以降、RSAセキュリティはどのように変化したか。

 RSAセキュリティは暗号化技術の老舗であり、ワンタイムパスワードなどの認証に強みを持つ。EMCに買収する以前は、暗号化製品、認証製品のようにセキュリティの中でもセグメント化された市場でビジネスをしていた。

 EMCグループ入りをきっかけに、よりセキュリティの上層部で勝負をするようになった。個々の分野のセキュリティ製品を提供していた企業から、様々なセキュリティ製品から出されるログやアラートを管理する「セキュリティ管理」のベンダーへと変わってきている。これは、EMCが抱える大規模企業の顧客ニーズに応えたものだ。

 DLP(データ漏えい防止)製品の買収も、同様のビジョンに基づいている。ストレージに保存されたデータを整理して保護するDLPは、セグメント化できないセキュリティ管理製品の1つと考える。さらに、2010年1月に米EMCが買収したGRC(ガバメント・リスク・コンプライアンス)製品は、経営者の視点でセキュリティを管理するというものだ。

「クラウド移行時のセキュリティへの不安を払拭したい」と語る山野氏
「クラウド移行時のセキュリティへの不安を払拭したい」と語る山野氏