PCなどの端末製品は富士通にとって本当に必要ですか。SPARCの将来性や、スーパーコンピュータも含めたサーバー製品のラインアップの見直しについてはいかがですか。
クラウド時代には、PCや携帯電話などの「ユビキタスフロント」がキーになりますので、そうした技術や製品を持っていることの重要性は今まで以上に高い。以前、スマートフォンも年内に出すと言いましたが、これには少し誤解があって、富士通製の携帯電話のほとんどが、すでにスマートフォンなのですね。課題はiPhoneのようなサービスで、残念ながら我々には作れない。今後はサービスに強い企業と連携することも考えなければいけないでしょう。
SPARCに関しては、膨大な顧客ベースがあります。この顧客ベ ースは守りたいし、お客様に対して製品を提供していく義務もある。それに、CPU性能も含めてトータルで性能を出していくというニーズは、今後のクラウド環境でもあるはずです。クラウドをSPARC Enterpriseで作るという話も出てくると思いますよ。
(CPUをItaniumからXeonへ変更した)PRIMEQUESTについては、お客様の資産をそのまま継承できることを保証します。Xeon系とSPARC系のサーバーは、将来はともかく、今は確実に売り分けられるし、お客様も使い分けられると思っています。
スパコンは、社内でいろいろな議論があるのは事実です。ただ日本が科学技術立国であるために、世界に通用するスパコンは絶対に必要です。そして、富士通のなかでスパコンの技術を使いきれるが、我々の勝負どころです。当然SPARCにも使うし、メインフレームにも使っていきます。
成長のためにIT投資は不可欠
最近、「中堅企業市場に再チャレンジする」といった話をされていましたが、真意は何ですか。新規開発案件が少なくなっている大手顧客への今後のアプローチについても、お聞かせください。
中堅企業市場ではいろいろやっていたのですが、必ずしも成功していない。それは数字にも表れていて、大企業で30%近くあるシェアが、中堅企業では10%台です。それでもう一度チャレンジしようというわけです。4月に中堅企業向けパッケージなどの開発は、全部FJB(富士通ビジネスシステム)に統合しました。10月からは営業もFJBに寄せます。FJBが主体となって、パートナー企業と一緒に中堅企業市場を攻める形が出来上がります。
一方、大手のお客様に関しては、現行システムを継続しながら、どうやってコストダウンしていくかについて、富士通は徹底的に考えていかなければいけません。ハイブリッド化したクラウドというのも、そのための提案の一つです。コストが下がった分、新たなIT投資でお客様のビジネスを広げていただきたい。IT投資しないで済むビジネスはありません。お客様が成長路線をとる限り、ITはどんどん入っていくはずです。
山本 正已(やまもと・まさみ)氏
(聞き手は、木村 岳史=日経コンピュータ)