[後編]POWERの強化を続ける オラクルは語っているだけ

ところでPOWERを、どこまで強化していくのですか。もうすでに十分に速いので、これ以上の高速化を必要とするアプリケーションはないのでは、という声もありますが。

 POWERにおけるパフォーマンスは、一つの重要な要素だと思っています。IDCの調査によると、年間60%増の割合でデータ量が増大しています。リアルタイムでデータを分析する用途などで、引き続きパフォーマンスの向上が必要になってくるはずです。パフォーマンスの向上には複合的なメリットもあります。同じ処理をするにしても、ソフトウエアのライセンスが少なくて済みますから。

 POWERに対する投資は、実はシステムスタックの最適化というアプローチで進めています。半導体をはじめ、ハードウエアのデザイン、そしてOSやミドルウエア、最終的にはアプリケーションも含めて、あらゆるレベルで投資していくということです。これらをうまく統合することによって、トータルなパフォーマンスが出ます。つまり、個々のお客様が求めるワ ークロードのために最適化されたシステムになるわけです。

オラクルも重要性に気付いた

少々古い話で恐縮ですが、なぜサン・マイクロシステムズの買収を狙ったのですか。顧客ベースの拡大以外に戦略上の意味があったのでしょうか。オラクルに買われるぐらいだったら、もっと無理すればよかったとお考えですか。

ロッド・アドキンス 氏
写真:陶山 勉

 確かにサン・マイクロを、IBMが買収するのではないかといううわさはありました。そして事実として、最終的にオラクルがサン・マイクロを買収しました。

 なぜオラクルが買収したのかについてコメントするならば、IBMが長年にわたって提唱してきたワ ークロードのために最適化されたシステムというビジョンについて、オラクルも同じように考えたのではないかと思います。つまりシステムスタックをトップダウンで統合するということです。

 オラクルとサン・マイクロは一つになりましたが、実態はまだ別々のままだと思いますよ。共同で投資を続けたとしても、統合されたソリューションを提供できるようになるまでには何年もかかるはずです。

 POWER7は、まさにそういったことをすでに実現していて、プロセッサのなかにパフォーマンス向上のために専用回路を設けるところまでやっています。何年も開発を続け、巨額の投資をしていかなければ実現できないレベルの統合です。サン・マイクロとオラクルの場合、まだ時間がかかるでしょう。ワークロードのために最適化されたシステムを、IBMはすでに提供しているが、オラクルとサン・マイクロはそれについて語っている段階でしかないと思います。

米IBM シニア・バイス・プレジデント
ロッド・アドキンス 氏
現在、半導体やサーバー、ストレージ、システムソフトなどを扱うシステム&テクノロジー・グループを率いるシニア・バイス・プレジデント。1981年9月、IBMに入社。86年2月にエントリー・システムズ・ディビジョンのスペシャル・コンポーネント・エンジニアリングのマネジャー。以降、デスクトップおよびUNIXシステム・ビジネスなどのマネジメントを歴任。2001年10月にソフトウェア・グループのパーベイシブ・コンピューティング・ディビジョンのゼネラル・マネジャー。09年10月から現職。

(聞き手は、木村 岳史=日経コンピュータ)