ソーシャルメディアと連携し、購買へと結び付ける

 ソフトバンクは2010年5月、インターネットのライブ動画配信サービス「Ustream」を提供する米ユーストリームと、アジアでの事業展開を目的とした合弁会社USTREAM Asiaを日本において設立することで合意した。新会社の社長に就任し、TVバンク社長を兼務する中川氏に、日本における今後のUstreamの事業展開について聞いた。

Ustreamの日本における利用状況は。

 日本だけの数字は取り切れていないが、ワールドワイドでは視聴者数が非常に伸びている。これは日次のユニークユーザー数を足し込んだ数字だが、2009年12月の月間7000万人から、2010年5月には1億1000万人まで増えた。また、12月時点における日本からの比率は5%くらいだったが、同時にこれも約15%まで高まった。

日本で急激に伸びているのはなぜか。

 Ustreamはライブ動画を配信するWebサービスだが、集客という面ではページトップに頼っているのではなく、ソーシャルメディアからの流入が非常に多い。孫社長(孫正義ソフトバンク代表取締役社長)の効果が大きいと思うが、「Twitter」からの流入が多い。Twitter自体のつぶやきが急速に増える中で、それに引きずられる形で伸びてきている。Ustreamの日本語対応についても、4月27日にサイトの日本語化を発表し、5月18日には「iPhone」アプリケーションを発表した。日本では、もっと急激に伸びていくとみている。

 第1弾はサイト、アプリの日本語化ということだったが、当然そこに流れるコンテンツ、番組が日本語化されないと仕方がない。そのために東京・汐留にある(ソフトバンク本社の)食堂をスタジオと銘打って、3月28日にライブ配信の第1弾を実施した。5月10日には渋谷スタジオを開設し、6月1日からは(レストランカラオケを展開する)シダックスの東京・渋谷店の中に5部屋ほど「Ustreamルーム」という形で展開している。それがコンテンツの充実に大きく貢献している。

 スタジオを作ることによって優良な番組が出てきて、増殖のスピードがさらに加速するという手応えを感じている。既に大手の音楽レーベルさんに使っていただいていて、自動車メーカーさんもほとんどがトライアルをされている。

マーケティングには具体的にどう使えるのか。

 まだ、確立した手法は無い。それはUstreamだけの話ではなくて、Twitterとの連動性があるので、Twitter自体がどうマーケティングに利用されていくかということと表裏一体の関係にある。

 私が思っているのは、テレビといったマスメディアのやり方とは違い、TwitterもUstreamもコミュニティとの連動が重要。1つひとつの固まりは小さくても、浸透度合いの深い小集団、グループが集まったものの総称ということになる。そこでのマイクロマーケティングが連なって、大きな動きになると思っている。

 誰かが何かをつぶやいたときに「せいぜい数十人、数百人」と見るのか、「数十人、数百人だが、そのうちのかなり高い比率で物を売ってくれる、買ってくれる」と見るのか。まだマーケティング手法としては確立していないが、実感としては“来ている”という思いが強い。今までは、呼び込んでくる元がポータルサイトだったりしたものが、米国ではSNSの「Facebook」だったり、日本ではTwitterだったり、SNSの「mixi」だったりと変化している。