[前編]海外に出ないと未来は無い iPadの登場は大きなチャンス

はたしてNECは復活できるのか。その問いに正対する重責を担うのは、4月に社長に就任した遠藤信博氏だ。かつて超小型マイクロ波通信装置を世界トップシェアに押し上げた手腕で、売上高4兆円の回復を図る。クラウドコンピューティングで市場を世界に求める新社長に事業戦略を聞く。

社長就任発表時に公開した中期経営計画では、2012年度に売上高4兆円、営業利益2000億円を目標にしています。スタート台の09年度予想が3兆6600億円で、旧NECエレクトロニクスの分を除くと3兆2000億円ですね。営業利益が600億円。そこからすると極めて高い目標ですが、勝算はあるのですか。

 売上高4兆円と海外比率25%が大きなポイントです。4兆円の売上高や海外比率25%は、過去に経験があるんですよ。あんまりそういう言葉を使いたくないのですが、目標にはNECの復活という意味があります。今のNECは、以前に比べてアセットが減ったわけではないのです。その意味では、もう一度しっかりやらないといかんということです。

 施策としては、クラウドコンピューティングと、「One NEC」での新規領域の創造、それらをグローバルに展開する5極体制、この三つが主なものです。国内市場は、人口が減るに従い相応の規模になっていくと理解すべきです。海外に出て行かないと、我々の成長はありません。

 以前、海外比率が25%あったころは、ビジネスユニットごとに海外に出ていって、あるプロジェクト、あるプロダクトの展開が終わったら戻ってきてしまっていた。現地にとどまるビジネスになっていませんでした。今回は北米、欧州、中華圏などの5極体制をしっかり作って、面の展開をします。

 面の展開というのは、一つにはソリューションを現地の法人が作り上げて、マーケットをしっかりと作り、お客様に提供していくということです。

 もう一つは、お客様のアセットをもっと有効に活用することです。海外に非常に大きな通信事業者のお客様があって、ネットワークシステムを納めてきましたが、そうしたお客様に対して今度はSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)のソリューションを提供しました。今後はそういう展開を強化していきたいと思っています。

 その場合、全く違うものではなくて、ネットワークと関連するITソリューションを提供できるところにNECの強みがあります。さらにITとネットワークを融合させた共通プラットフォームをつくることも、3年前から始めています。米国ベンダーも企業買収を通じて似た動きをしているようですが、プラットフォームの融合には時間がかかります。我々は先行しており、アドバンテージがあります。